第71話 真実の告白

「僕たち、本当は付き合ってないんだ」


 朝食を取るためにやってきた会場で、僕は千紗乃との本当の関係を父さんたちに暴露した。


 千紗乃との嘘の恋人関係を暴露し、友達に戻るという選択が正しいのかどうかはわからない。


 それでも僕は千紗乃と友達という関係がほしかった。


 父さんたちの前で千紗乃との関係を暴露した瞬間、僕と千紗乃以外から『--え?』という驚きの言葉が出る。


 一番怖かったのは千紗乃の両親の反応だが、僕の両親と同じく大きな口を開け驚くだけで、飛びかかったりしてくることはなかったので安心した。 


 それからしばらくは驚きで言葉を失ってしまった父さんたちだったが、しばらくしてから訊いてきた。


「ちょ、ちょっと待て灯織。それはどういうことなんだ?」


 そう訊かれた僕は、僕たちがなぜ嘘の恋人という関係を続けていたのか、そしてなぜその関係を終わらせようと思ったのかを事細かに説明を始めた。




「--というわけで、僕と千紗乃は嘘の恋人関係を解消して、正式な友達に戻らせてもらう」


 全てを説明し終えて父さんたちの表情を見ると、より一層困惑した表情を見せている。


「え、ちょ、ちょっと待って灯織。事情は理解したけど、それじゃあ千紗乃ちゃんとはもう付き合わないし結婚しないのか?」

「そ、そうだよお兄ちゃん‼︎ 私もうお姉ちゃんのこと本当のお姉ちゃんだと思ってるんだよ⁉︎」


 母さん気持ちは理解できるが、正直まだ結婚してもいないのに千紗乃のことをお姉ちゃんと呼んでいる有亜については放置しておいても問題ないだろう。


「そ、それはだな……。別に友達に戻ったからと言って、今後そうなることがないのかと言われるとそういうわけでもないというかなんというか」

「なーんだ。それなら安心ね」

「--え?」


 母さんは僕の反応を見て安堵の表情を見せる。


 僕が思っていた反応と違う反応を見せるので、僕の方が困惑してしまう。


「うん、今のお兄ちゃんの反応見てたら私も安心したよ」

「え、ちょ、ちょっと待て。今の僕の反応だけでそんなに安心できる意味が分からないんだが⁉︎」

「灯織の反応だけじゃないわよ。ねっ?」

「はい。私も何も心配していません」

「え、え? 本当に訳がわからないんだが‼︎ おい、千紗乃もなんとか言ってやってくれ……」


 そう言いながら辺りを見渡すと、千紗乃は壁の方を向いて僕に背を向けている。


「おい千紗乃、なんで壁の方見てるんだよ」

「べ、別に? なんでもないけど?」

「なんでもないなら僕の方を見ずに壁の方を見てるのはなんでなんだ⁉︎」

「だからなんでもないって言ってるでしょ⁉︎ いいから放っておいてよ‼︎」

「いやそこはなんでもあれよ‼︎ おい‼︎ 目逸らすなって‼︎」


 僕は無理やり千紗乃の肩を引っ張りこちらへ振り向かせる。


「--っ」

「--っ⁉︎」 


 千紗乃はこれまで見たこともないほど顔を真っ赤にさせ、恥ずかしそうに視線を逸らす。


 その表情を見た僕は、それ以降黙り込み、その場に正座をして座り込むのだった。

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