第86話 追加メンバー
「へぇー。本庄君達って本当に同棲してたんだ〜」
「ちょっと愛桜‼︎ 勝手に色んなところ見て回ったら失礼でしょ⁉︎」
僕たちの家には藤田さんだけではなく瀬川さんまでやってきた。
なぜ瀬川さんまで僕たちの家にやってきたのだろうか。
藤田さんは明確に僕へ好意を寄せているので僕たちの家に来たがるのは理解できるが、瀬川さんがここにくる必要はないはずだ。
「なんで瀬川さんまでついてきたの?」
「硬いこと言わないでよ。まあ憂の付き添いってところかな」
「そうそう‼︎ 硬いこと言わない‼︎」
「「ねーっ」」
僕たちの家に追加でやってきたのは瀬川さんだけではない。
今まさに瀬川さんと息を合わせて声を出したのは雨森さんだ。
僕たちが学校を出て家に向かおうとしていたところで雨森さんまで声をかけてきて、僕たちの家に転がり込んでくることとなってしまった。
キャラが若干似ているせいか雨森さんと瀬川さんはすっかり意気投合してしまっている。
学校を終えて帰宅してきて疲労が溜まっており早く落ち着きたいと考えているこちらからすると迷惑この上ないコンビだ。
「コラ音夢、あんまり灯織を困らせるなよ」
「はいはーい」
雨森さんがいればもちろん翔太もいる。
こうして騒がしい二人に注意をしてくれる翔太の存在が僕にとっての唯一の救いだった。
「まさか雨森さんと水野君が付き合ってたとはねー」
「それを言うなら藤田ちゃんが本庄君のこと好きってことの方が驚きだよ〜」
「あ、あの、事実ではあるんですけど恥ずかしいのであまりはっきりとそういうことは……」
「あはーそうだよね。ごめんごめん」
あーダメだ。僕はこのカオスな状況に耐えきれそうにない…。
騒がしい声が耳に突き刺さり、その影響で頭痛まで感じるようになってしまった。
あまりの痛みから額に手のひらを押し当てながら思わず少しふらついてしまう。
「っと、大丈夫?」
僕がふらついていたことに気付いた千紗乃が僕の肩を持って支えてくれた。
「す、すまん。ありがとう」
「無理はしちゃダメだからね」
ああ……。その微笑み、まさに癒し……。
この混沌とした家の中で、千紗乃の半径1メートル以内だけは天国のような空間だ。
これが天使、これが女神。
「ああ。大丈夫。ちょっとふらついただけだから」
藤田さんからすれば僕と二人きりで遊んで仲を深めようと考えていたのだろうが、状況が混沌としすぎて二人の仲を深めるなんて不可能な状態だ。
せめて藤田さん以外の人間には帰ってもらわなければこの場がまとまりそうな様子はない。
「……ねぇ、せっかくだしなんかゲームでもしない?」
そう言い出したのは瀬川さんだ。
確かにそこかしこで各々が会話をしているよりはこの混沌とした状態が落ち着くかもしれない。
ゲームをする気力などとうにありもしないが、瀬川さんの意見をのむことにした。
「そうだな。ただ喋ってるだけでも暇だしその方がいいかも。なんのゲームするか案はあるのか?」
「そりゃ男女が入り混じるこの空間でやるゲームなんて一つしかないでしょ‼︎」
「一つしかない?」
「王様ゲームっ」
自分がそのゲームに参加したことはないが、名前くらいは聞いたことがある。
なぜかは分からないが何か波乱が巻き起こりそうな、そんな気がしてならない。
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