第15話 監視される兄
「妹ってどういうこと⁉︎ なんで灯織君の妹があんなところにいるのよ⁉︎」
千紗乃は目を右往左往させながらもの凄い勢いで僕に詰め寄ってくる。
これはまずい、このままでは有亜に僕と千紗乃の仲が悪いと思われて両親に報告されてしまうかもしれない。
なんとかして興奮してしまった千紗乃の頭を冷やさなければ……。
てか距離近いって焦り過ぎて距離感バグってません千紗乃さん?
「ちょ、ちょっと待てって……」
「待ってる余裕なんてないわよ--⁉︎」
有亜に僕たちの関係を疑われると両親にその情報が伝わってしまう可能性があると危惧した僕は、気が動転してしまい僕に詰め寄ってくる千紗乃を強く抱きしめた。
抱きしめた瞬間反射的に殴られるかもしれないと思っていたが、不快感よりも驚きが勝ってしまったようで固まってしまい動き出す気配の無い千紗乃。
ひとまず僕の取った行動が悪手で一瞬にして僕たちの関係性がバレてしまうということはなかったが、まだまだ気は抜けない状況だ。
「あんまり喧嘩してる素ぶり見せると疑われかねないだろ。嫌だと思うけとしばらくこのままで我慢してくれ」
「う、うん……」
千紗乃に抱きつきながら有亜の方に視線をやるが、有亜からの視線が僕たちから離れることはない。
偶然同日に遊園地に来ており僕たちのことを見かけ視線を送っている、というわけではなく、恐らく今日遊園地に来た目的は僕たちを見張ることなのだろう。
妹が兄のデートを監視するなんてことあり得ないのだが、有亜ならその可能性もあり得る。
となると、この後も僕たちが帰宅するまで後をつけてくるはず。
こうなったら覚悟を決めるしかないな。
「すまん、千紗乃、このまま聞いてくれ。多分有亜はこの後も僕たちのことを監視してくると思う。だからとにかく僕たちはラブラブなカップルのフリをしないといけないわだけど……。協力してくれるか? 嫌なら断ってくれて問題ないぞ」
「……そうしないと私たちがカップルのフリしてることがバレちゃうんでしょ? それはお互い避けた方が良いと思うし協力するわよ」
本意ではないのだろうが、千紗乃としても自分の両親に僕と付き合っているという話が嘘だとバレてしまうのは問題だと考えているのだろう。
致し方なく、という形で有亜を騙すためのデートを続ける了承をしてくれた。
「ありがとう。それじゃあとりあえず離れるぞ」
「……うん」
そう言って千紗乃の肩を掴み僕から離そうとした時、一瞬名残惜しく抱きつかれた様な感覚に陥ったが、恐らくは僕の都合の良い勘違いなのだろう。
「それでどうするの? 偽物のカップルだって疑われない様にしないといけないのよね」
千紗乃の言う通り、まずは有亜を騙すために僕たちが本物のカップルに見える様なイベントを発生させなければならないわけだけど……。
「そうだな……。僕たちを本物のカップルに見せるには……」」
先程の様にジェットコースターに乗るだけではカップル感はあまりでないし、かといってメリーゴーランドの様な千紗乃と距離が離れてしまうイベントでもカップル感を醸し出すことはできない。
一体どんなイベントを発生させれば……。
……あ、一つだけあるじゃないか、僕たちがカップルだと見せつけるためにもってこいのイベントが。
「よし、お化け屋敷だ」
「……化け屋敷?」
千紗乃がキョトンとしていることなんて気にも留めず、僕は千紗乃の手を握ってお化け屋敷へと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます