第14話 見張り役
ジェットコースターから無事生還した僕は叫び過ぎたせいで大幅に体力を削られていた。
体力削られてる時点で無事生還してるのかどうかは定かじゃないけど。
「はぁ、はぁ。こんなに疲れたっけかジェットコースターって……」
疲労困憊となってしまった要因はジェットコースターのみにあらず、最大の要因は千紗乃が終始僕の手を握っていたことである。
女子の手を握ったことなんて一度も無いのに、それがS級美少女の千紗乃の手とくれば気が気ではないことくらい容易に想像が付くだろう。
しかも、手を握ったのは僕からではなく千紗乃の方からだった。
その理由を考えたり叫んだり、千紗乃の手を強く握りすぎないように注意したりとやることがが多すぎたので、普段からロクに運動もしていない僕の体力が一瞬にして底を付いてしまうのは当然のことなのである。
「そう? 私は楽しかったけど」
「てかなんで手握ってきたんだよ。嘘のカップルとして遊園地に遊びに来るまではいいとして、わざわざ手を握る必要なんて無くないか?」
「いつどこで誰に見られてるかなんて分からないじゃない。誰かに見られた時にボロが出ないよう今のうちに少しでも本物のカップルっぽいこと経験しておいた方がいいでしょ?」
「一理あるけどだからって……」
「嫌だった?」
僕のセリフに被せ気味でそう訊いてきた千紗乃に嫌だったとは言えるはずもなく、僕は力無く『嫌ではなかったけど……』とだけ答えた。
照れ隠しでそう答えはしたものの、嬉しくてドキドキした、とは口が裂けても言えない。
というか、千紗乃は嫌ではなかったのだろうか。
なんの躊躇いもなく僕の手を思いっきり握ってきたが、普通男子と手を繋ぐのって好きな人とでもない限り嫌がる気がするんだけど。
え、もしかして僕のこと……。
いやいや、ないないない。万が一にもそんなことはない。
「……ん?」
「どうかしたの?」
僕の視線の先に、見覚えのある人影が見えた気がして目を細める。
あれは……。
「……--
「え? 誰か知ってる人がいたの?」
僕の視線の先では知っているだけでは到底済まされない人物が物陰からこちらに視線を送っており、思わず目を逸らす。
「あ、ああ……。えーっと……。知ってるというかなんというか……」
「何よ、歯切れが悪いわね」
歯切れが悪くなるのも無理はないだろう。
あいつがいることで、このデートの難易度は格段に跳ね上がるのだから。
「……僕らの後をつけてる奴がいる」
「--えっ⁉︎ 何のためにそんな⁉︎」
「すまん、千紗乃。あれは僕の妹だ」
「……へ?」
僕の視線の先には紛う事なき僕の妹、
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