第25話 取り消しメッセージ

 千紗乃に『もしかして千紗乃って僕のこと好きだったりする?』』と訊いてから一週間が経過した頃、僕はスマホゲームを楽しみながらベッドに寝転がっていた。


 あまりにも自意識過剰な質問をしてしまったと後悔もしたし、今思い出すだけで赤面してしまうような恥ずかしい質問ではあったが、今後の関係を続けていく上でお互いの気持ちは認識しておかなければならなかったのだから仕方がないと割り切ることができている。


 質問ゲームをした時はお互い付き合っている人も好きな人もいないと言ってはいたが、多感なこの時期、すぐに好きな人ができたり付き合ったりしても違和感はない。


 しかし、結局は僕が一人で勝手に勘違いしていただけで、千紗乃が僕のことを好きになるという奇跡は起こりえなかった。


 とはいえ、今後の関係を続けていく上で千紗乃が僕のことを好きではないと再認識できてよかった。


 さ、気楽にゲームの続きを……。


 そう考えていた矢先、通知音が鳴り響き、スマホ上部に通知の内容が表示される。


千紗乃『好きです』


 ……ん?


 好きです?


 僕は千紗乃から送られてきたメッセージの内容に目を疑い、目がおかしくなったのではないかと目を擦る。


 僕が目を擦っていると、再び通知が鳴り響きスマホの画面上部に再び通知の内容が表示された。


千紗乃『千紗乃がメッセージの送信を取り消しました』


 --は⁉︎ 取り消し⁉︎、


 いや待てわけ分からないだろこれ‼︎


 まず、『好きです』というのは素直に、千紗乃が僕のことを好きということなのだろうか。

 しかし、一週間前に千紗乃の気持ちは確認したばかりなので、あの日から今日までの間に千紗乃が僕のことを好きになるとは到底思えない。


 となると、先ほど送られたきたメッセージは僕に対するものではなくて、何か別のものを指しているのかもしれない。


 例えば犬が好きですとか。


 いや、それはあまりにも言い訳がましいし、違和感が残る。


 僕以外の誰か別の男子に送ろうとしていたということも考えられる。


 それならば先程のメッセージにも説明が付くし、筋が通っており違和感はない。


 そうだ。きっとそうに違いない。


 となると、やはり千紗乃は僕のことなんか好きではなくて、嘘の恋人を、ましてや許嫁という関係性は早く終わらせたいと思っている可能性がある。


 これは死活問題だな……。


 僕たちはあくまで両親を納得させるためだけに嘘の恋人をやっているので、千紗乃に好きな男子がいるとなれば今後の対応は大幅に変わってくる。


千紗乃『今のメッセージ、見た?』


 メッセージが取り消された後、千紗乃から送られてきたメッセージの内容を見るに、やはり先程の内容は僕に見られたくなかったようだ。


 本当はしっかり内容を確認したが、ややこしくなりそうなので、『いや、見てないけど』とだけ返信した。


 とりあえず、千紗乃には僕以外に誰か好きな人がいるのだと決定付けることができた。

 こうなってしまったからには改めて千紗乃との関係性について考え直さなければならないだろう。

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