好きなら
第24話 告白しちゃう?
灯織君から『もしかして千紗乃って本当に僕のこと好きだったりするか?』と訊かれて一週間が経過した平日の夜、私は愛犬のトイプードル、ノノとベッドに寝転がりながらスマホを操作していた。
灯織君に私の気持ちに気付かれそうになったからには、早急に今後どのようにして関わっていくべきなのかを熟考しなければならない。
答えが出るまでに時間はかかったものの、私が導き出した答えは、『告白すればいいんじゃない?』というものだった。
そもそも私と灯織君が嘘の恋人になったのは、私が灯織君の許嫁になるのを嫌がるだろうと灯織君が気を遣ってくれたからだ。
その時点で私はまだ灯織君のことが好きではなかったので、嘘の恋人になるという選択肢は私にとって非常に助かるものではあったが、今と昔とではあまりにも話が違う。
だって私は灯織君のことが好きなのだから。
灯織君のことが好きならば、許嫁になったって構わないし、むしろ許嫁になりたいくらいだ。
旦那にするなら優しい人がいいと思っていたし、灯織君からは『良いお父さんになるだろうなぁ』という雰囲気が溢れ出している。
それならば、
『もう本当の気持ちを灯織君に伝えてしまおう』
という結論に至ったわけだ。
気持ちを伝えたら今の関係が崩れてしまうとか、振られたらどうしようとか、考えることは山ほどあるが、どうせ灯織君に対する私の態度はこれ以上隠しきれそうにない。
思い立ったが吉日だと、私はスマホを操作し何度も文章を打っては消してを繰り返している。
『灯織君の優しいところが大好きです』って急に送られてきてもわけ分かんないだろうし……。
『許嫁、なってあげてもいいけど?』って上から目線すぎて何言ってんだこいつってなるだろうし……。ああもうどうしよう……。
考えに考えた挙句、私のメッセージを打ち込む欄には、『好きです』の一言だった。
難しく考えるよりもこの一言を送る方が分かりやすいし効果もあるだろうと思ったからだ。
後はこの送信マークを押すだけなのである。
よし、それじゃあ送信……。
ってこんなボタン押せるわけないでしょ⁉︎
世の中のカップルみんなこの試練を乗り越えてるって凄すぎない⁉︎
好きという気持ちを言葉ではっきりと伝えるにはシンプルに恥ずかしいという思いもあれば、フラれてしまったらどうしようという心配もある。
このボタンを押してしまえば一瞬で私の気持ちが灯織君に伝わってしまうと考えると、到底この送信ボタンを押す勇気は出てこなかった。
「はぁ……。私ってどうしてこうなのかしら……」
私がため息をついていると、愛犬のノノが近くにやってきて、体を擦り寄せてくれる。
「ありがとノノ。ノノは本当に優しいね……」
ノノの優しさに触れ、ただでさえ愛おしいノノが更に愛おしくなる。
そう思ったのも束の間、ノノは私のスマホの画面に手を伸ばし、送信ボタンを押した。
「ちょ、ノノ⁉︎」
私は慌てて送信取り消しボタンを押す。
なんとか既読をつけられる前に送信取り消ししておいたのでメッセージは読まれていないと思うが、読まれていたとしたら……。
そんな不安から居ても立っても居られなくなった私はメッセージを送った。
『今のメッセージ、見た?』
すぐに返信がくることはなかったが、三十分後くらいに、『いや、見てないけど』とだけメッセージが来た。
よかったぁぁぁぁぁぁ。
危うく私たちの関係が破綻するところだったよ……。
一気に緊張の紐が解けた私は、スイッチが切れたようにぐっすりと眠りについてしまった。
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