第3話 好きの確信
僕はとんでもないことを犯してしまったのではないだろうか。
『付き合っているフリでもしとけばいいだろ』
勢いでそんなことを言ってしまったが、そんなことをしなくても僕が直接父親に神凪が僕の許嫁になる話はナシにしてくれと言えば済む話。
良いとも嫌だとも返答をしてこなかった神凪だが、気持ち悪いとか思われてないだろうか……。
昨日神凪と別れてから翌日の放課後になった今の今まで昨日の出来事が頭から離れない。
できるだけ神凪に迷惑がかからないようにと考えて発言をしたつもりだったのだが、それが逆に迷惑になっているかもしれないなんてその時は頭が回らなかった。
実際神凪はめちゃくちゃ可愛いし、僕のようなスクールカースト最下層にいる人間が気軽に会話できる階層にいる人間ではない。
とりあえず今日は神凪と関わらず過ごすことができたので、このまま何事も無かったかのように帰宅してしまおう。
「本庄君」
その綺麗なスッと通る声のおかげで、誰から声をかけられたのかは一瞬で理解できた。
「は、はい……」
「ちょっと来てもらえるかしら」
や、やめてくれ。
神凪が僕みたいな地味な人間に話しかけたら目立つじゃないか……ってもう遅いか。
うぅクラス中からの視線が痛い。
「き、来てってどこに……」
「いいからついてきて」
僕の返答を待たずに背を向けて歩き出した神凪の後を追わないなんてことをする勇気は待ち合わせておらず、渋々後ろをついていくことにした。
そうしてやってきたのは人目につかない校舎裏。
弓道場があるものの、今は使用されておらず僕たち以外の生徒は誰もいない。
「そ、それで話って言うのは……」
「本庄君、私と結婚したくないの?」
「昨日も言ったけど、神凪みたいな可愛い女子と結婚なんてできたら最高だなとは思うよ」
「--っ。だ、だったらなんで結婚はしなくていいから付き合ってるフリをしようだなんて言い出したのよ」
「……? そりゃ神凪が嫌がるからだけど」
あまりにも当たり前の質問をしてくる神凪に、僕は思ったことをそのまま口にした。
「それでいいの? わ、私だって結婚するのは自分で見つけた素敵な人が良いと思ってるけど」
「当たり前だろ。僕が嬉しくても神凪が嬉しくなかったんじゃ意味ないし」
「……」
「どうした?」
「……」
「おーい、神凪?」
「……」
「神凪?」
「--はっ⁉︎ ま、まあ確かにそうよね」
僕の問いかけを何度か無視し、思考停止していた様子の神凪だが、何を考えていたのかは見当も付かない。
「昨日家に帰ってからずっと考えてたんだよ。神凪に付き合ってるフリをしようなんて言ったけど、それ自体嫌なんじゃないかって。どうだ? 嫌なら付き合ってるフリなんてせずに直接親に交渉しに行くけど」
「--いえ、付き合ってるフリで大丈夫」
「いや、でも神凪に迷惑が……」
「そ、それはそうかもしれないけど、本庄君の父親と私の父親の仲が悪くなったら私にとっても不利益だし」
「分かった。じゃあとりあえず連絡先だけ交換しとくか」
「そ、そうね……」
こうして僕は神凪と連絡先を交換し、正式に神凪と嘘のカップルとなった。
「……? そりゃ神凪が嫌がるからだけど」
あまりにも当たり前にそう言ってのけた本庄君を見て、私は頬を紅潮させていた。
「そ、それでいいの? わ、私だって結婚するのは自分で見つけた素敵な人が良いと思ってるけど」
「当たり前だろ。僕が嬉しくても神凪が嬉しくなかったんじゃ意味ないし」
……なんで本庄君はこんなに優しいの?
自分だって無理やり私と許嫁にさせられて嫌な部分は絶対あるはずなのに、なんでこんなに私のことを考えてくれるの?
なんで……。
「……(好き)」
「どうした?」
「……(大好き)」
「おーい、神凪?」
「……(大好きぃ)」
「神凪?」
「--はっ⁉︎ ま、まあ確かにそうよね」
私は本庄君の言葉が聞こえなくなる程、思いが昂っていた。
「僕も昨日家に帰ってからずっと考えてたんだよ。神凪に付き合ってるフリをしようなんて言ったけど、それ自体嫌なんじゃないかって。どうだ? 嫌なら付き合ってるフリなんてせずに直接親に交渉しに行くけど」
「--いえ、付き合ってるフリで大丈夫」
「いや、でも神凪に迷惑が……」
「そ、それはそうかもしれないけど、本庄君の父親と私の父親の仲が悪くなったら私にとっても不利益だし」
「分かった。じゃあとりあえず連絡先だけ交換しとくか」
「そ、そうね……」
今までこんなに優しい人見たことない。
どうしようどうしようどうしようどうしよう‼︎
私、本庄君のこと、めちゃくちゃ好きになっちゃったっ‼︎‼︎‼︎‼︎????????
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