おうちデート
第4話 家への誘い
うざったらしい程の青空の下、目を擦りながら登校してきた僕はいつも通りカバンを席の横に掛け、自分の席に座った。
神凪と嘘のカップルになってから一週間が経過したものの、これといって進展は無い。
このまま何事も無く、自然消滅的な形で神凪との関係を終わらせられるのが一番楽なのだが……。
そう思っていた矢先、僕の視界が暗くなる。
「本庄君、今日ウチに来て」
太陽の光を遮るようにして僕の前に立ったのは神凪だ。
そしてこれまた唐突に告げられた話に思わずため息が出そうになるが、目の前にいる神凪に失礼になるのでため息を出すのは我慢した。
せめてもの救いは教室内にいる他の生徒が友人同士の会話に夢中でこちらに視線が注がれていないことだろう。
「いや、なんで僕が神凪の家に行かないといけないんだよ」
「なんでも何も当たり前でしょ? 私たち、付き合ってるんだから」
「ちょ、学校ではあんま大きな声でその話するなよ‼︎」
「私は気にしないわよ? むしろ私たちがイチャイチャすればその噂が両親まで伝わりそうだし良いじゃない」
いや気にするだろ絶対。てか気にしてくれよ。
「そりゃお互いの両親を騙せるならプラスかもしれないけど、僕みたいな冴えない奴と付き合ってるって知られたら神凪にとっちゃあマイナスだろ」
「別に迷惑じゃないわよ。とにかくウチに来なさい」
「えー……」
「親に気付かれないようになんでも協力するって言ったのは本庄君でしょ?」
「ま、まあそうだけど……」
「本庄君が私の家に遊びにくれば、私と本庄君が仲良くしてるって両親は勘違いするはずよ。それはこれからの私たちの関係においてプラスになると思わない?」
神凪の発言はあまりにもその通り過ぎて、僕は納得させられてしまった。
それに神凪の言う通り、なんでも協力すると言ったのは僕自身なので神凪からの依頼を断るわけにはいかない。
「……まあ確かにな。その意見には納得だ」
「じゃあ私、学校終わったら先に帰って準備するから」
「分かった」
こうして僕は本当に付き合っているわけでもないのに神凪の家にお邪魔することになった。
以前から神凪のことは目で追ってしまう程可愛いと思っていたし、僕と神凪が関わるなんて一生無いことだろうと思っていた。
しかし、今となっては嘘のカップル。
地味で根暗でボッチな僕の、真っ暗だった人生が少しずつ、それでも確実に変わり始める予感がした。
「僕みたいな冴えない奴と付き合ってるって知られたら神凪にとっちゃあマイナスだろ」
私は本庄君の優しい言葉で更に胸を掴まれてしまう。
自分以外の誰かに、自分が損することを顧みず優しくできる人なんて今まで見たことがない。
その反対の人なら嫌という程見てきたが、本庄君のような人に出会ったのは初めてだった。
一度では無く二度、三度と私に優しさを向けてくれる本庄君からもう目が離せなくなっていた。
「じゃあ私、学校終わったら先に帰って準備するから」
「分かった」
本庄君のことが好きになってしまった私は、こうして家に誘うのも心臓が破裂してしまうのではないかと思う程緊張した。
それでも、私たちの関係を今よりもっと先に進めたい、そんな思いが背中を押してくれる。
とにかく今の関係が崩れ去ってしまわぬよう、尚且つ私たちの関係が前進するよう慎重に行動しよう。
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