第6章

第91話 これからのために

 お風呂から上がって髪を乾かしながら、私は以前みんなで揃ってプレイした王様ゲームのことを考えていた。


 これまでも灯織君のことを意識していた私だったが、あのゲームをきっかけにこれまで以上に灯織君のことを意識するようになってしまった。


 まさか灯織君が藤田さんに指を舐められるのが嫌で無理やり止めに入るなんて……。


 自分がそこまで嫉妬深い女だとは思っていなかった。

 これまでまともに好きになった人なんていないし、まさか自分が嫉妬深いだなんて……。


 いや、きっと灯織君のせいで嫉妬深くなってしまったのだろう。 


 いや、まあ嫉妬深くなくても好きな人が異性に指を舐められるなんて特異な状況に陥れば誰だって嫌がるのかもしれないけど。


 自分が嫉妬深いんだと理解してしまったせいか、この頃灯織君が私たち以外の女子生徒と会話をしている場面をよく見かける気がする。


 それは教室にいる時だけではなく、教室の外にいる時でも、他のクラスの女子生徒から話しかけられたりしている。


 今までそんな場面を見かけることはなかったのに、灯織君が女子生徒と会話をする回数が増えているのは、私と付き合っているという情報が流れたからだろう。


 良くも悪くも、私と付き合っているという噂が広まれば自然と灯織君に興味は向けられる。


 灯織君がいろいろな人と関わるようになったことは喜ぶべきことだ。


 昔のままの灯織君であれば交友関係を広げることなく高校を卒業することになっていただろうし、いろいろな人と関わることは灯織君にとってプラスになる。

 

 それなのに、そんな場面を目にするたびに胸がモヤっとして『早く話終わらないかな』なんて思っている私はやはり相当嫉妬深いのだろう。


 そんな灯織君の変化を目の当たりにした私は思った。


 私と灯織君の関係をいい加減前に進めなければならないと。


 このまま今の関係を続けていれば、その間に灯織君が他の女子生徒と仲良くなり『あの子と付き合いたいからこの関係は終わりにしたい』なんて言ってくる可能性だってある。


 そうなることを防ぐためにも、もう私たちは『普通の友人』、いや、『嘘の恋人』でいてはいけないのだ。


 いろいろと理由を述べたが、本音を言ってしまえばもう今の関係のままでは満足できない。


 だから決めた。


 私は灯織君に告白をする。


 そう決意をしたものの、意気地無しの私は灯織君が私に対して気があるかどうかを確認してからでないと告白をする勇気が出ない。


 それを確認するために今日、灯織君を誘惑してみることにしたのだ。


 私に気があるなら、手を繋ぎたいとか、抱きつきたいとか、キスしたいとか、それ以上のこととか……。


 そんなことをしたいと思うのが健全な男子高校生なはず。


 私に灯織君がちょっとでもそんな気を持ってくれているがとうがを確かめられれば告白の決心がつく。


 そして私は今、お風呂から上がりかなり露出度高めなパジャマを着ていた。

 露出度高めとは言っても、ただかなり丈の短いショートパンツを履いているってだけだけど。


 このショートパンツはあらかじめらネットで買っておいた格安のパジャマだ。

 きっと布が少ないから値段も安くなっているのだろう。


 なんて冗談はどうでもよくて‼︎


 私は意を決して洗面所からリビングへと繰り出した。

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