第64話 作戦決定
「作戦会議って言っても私何も案なんて無いわよ」
「……僕も案なんて無いよ。だからこその会議だろ」
『千紗乃との関係を終わらせる』という案ならあるが、それはもう心の奥にしまった。
今ならまだその案を取り出してくることも不可能ではないが、僕はもうその案を心の奥底にしまって墓場まで持っていくと決めた。
もう二度と自らその案を掘り返すことはないだろう。
千紗乃がその結論に辿り着かないためにも、他の案を思い付かなければならない。
「結構仲が良い姿は見せてるつもりだったんだけど……。何が私たちの関係を疑う原因になったのかしら」
「僕たちの関係を疑ってるというより、正確には本当に千紗乃が僕のことを好きなのかどうかってのが気になってる様子だったな」
母さんが千紗乃の僕に対する気持ちを疑ってしまうのは理解できるが、それを理解できてしまうのが虚しいな。
自分で自分には魅力が無いと理解しているということになるし。
「お義母さんはなんで灯織君が魅力ないって思い込んでるのかしら?」
「そりゃまあ実家では家事も勉強も大してせずグダグダしてきたからな」
「へぇ。じゃあ私しか知らない灯織君の魅力がたくさんあるのね」
--っ。
……はぁ。何を平然とした顔で言ってるんだこいつは。
あまりにも無意識に僕を褒めるような発言をするので思わずため息が出る。
今この部屋には僕と千紗乃しかおらず、嘘をついてラブラブなカップルを装う必要はない。
それなのに、僕を褒めるような発言をしたとなると今の発言はお世辞ではない。
千紗乃にそんなことを言われたら普通は悶絶してしまうが、今はそんな暇が無いので素直に受け取っておくとしよう。
とにかく、母さんが心配している、『千紗乃が本当に僕のことを好きなのか』ってのが僕たちの関係を信じ込ませる鍵になりそうだ。
「と、とにかく‼︎ 母さんは千紗乃が僕のことを本当に好きなのかどうか心配してるんだよ」
「じゃあどうしたらいいの?」
「千紗乃が僕のことをめっちゃ好きだって母さんにアピールしまくる必要がある」
「え、何それめっちゃ恥ずかしくない?」
母さんに僕たちが付き合っていることを納得させるには千紗乃が恥ずかしい思いをするしかない。
僕がどれだけ千紗乃に対する愛を見せ付けたとしても、千紗乃から僕に対する愛を見せ付けないことにはこの問題は解決しないのだ。
「めっちゃ恥ずかしいだろうな。でもそれを乗り越えないと僕たちの関係は終わってしまうだろうな」
「……どうすればいいんだろ」
「そうだな……。よし、あれしかない」
「あれ?」
とある作戦を思い付いた僕は、断られること覚悟でその作戦を千紗乃に伝えた。
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