第84話 正々堂々
千紗乃と話し合いをした結果、藤田さんには僕たちの関係を伝えることになった。
藤田さんに話す時に他の人に聞かれてはいけないと、以前藤田さんを追い詰めた時に会話をした屋上前のスペースへと藤田さんを呼び出した。
「は、話ってなんでしょう……。も、もしかして私今からカツアゲとかされちゃいます⁉︎ お、お金は持ってません‼︎」
僕たちがカツアゲなどするはずがないのに、藤田さんはカツアゲされるかもしれないという恐怖から『お金はありません』とその場をピョンピョンしてお金を持っていないことをアピールしてくる。
今時昔のヤンキーみたいにジャンプさせて音でお金を持ってるかどうか確認する人なんて存在してないだろ。
どこで得たんだよその知識。
「カツアゲなんてするわけないだろ。大事な話があっだから呼び出したんだよ」
「大事な話?」
「灯織君、この話、私からしてもいい?」
「別にいいけど話しづらくないか? 僕から話してもいいんだぞ?」
「大丈夫。この話は私からしないといけない気がするから」
なぜ千紗乃からしないといけないのかはよく分からなかったが、千紗乃が真剣な表情で僕を見つめてくるので真実を話すのは千紗乃に任せることにした。
「なら頼む」
「藤田さん」
「はいっ⁉︎ なんでしょう⁉︎」
「私と灯織君、本当は付き合ってないの」
「……え? 付き合ってない?」
「そうなのよ。実は--」
それから千紗乃は藤田さんに僕たちが嘘をついている理由を事細かに説明し、最初は戸惑っていた藤田さんも落ち着きを取り戻してきた。
「一つ確認させていただいてもいいですか?」
「もちろんよ」
「要するに、私まだ本庄君のこと、好きでいていいってことですか?」
「そうなるわね」
「……ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅううううう。良かっだぁぁぁぁぁあああああ」
「え、ちょ、ちょっと藤田さん⁉︎」
落ち着きを取り戻したかに見えた藤田さんだったが、その場にペタリと座り込み号泣し始めた。
「ど、どうした⁉︎ ちょ、ちょっと落ち着いて」
同級生の女子に目の前で号泣された経験なんてない僕は対応に困ってしまう。
まずは自分が落ち着いて、それから藤田さんの心を落ち着かせようとしてみたが余計に涙を流し始めた。
「だって、だっでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええん」
「僕たちに嘘つかれたのが泣くほど嫌だったのか?」
「ひぐっ。
「逆?」
「まだ本庄君のことを好きでいていいのが嬉しいんです。私、男の子のこと好きになったのなんて初めてだし、忘れようと思っても全然忘れられなくて正直まだ本庄君のこと全然すきなんでずぅぅぅ」
大号泣しながら不意に好意を伝えてくるので僕は思わず顔を紅潮させてしまう。
「--っ。な、泣くか喜ぶかどっちかにしてくれ」
「ちょっと、何顔赤くしちゃってんのよ」
「あ、赤くなんてなってねぇし⁉︎」
目の前にいる女子に好きだと言われて顔を赤くしない男子高校生なんて存在するのだろうか。
どれだけ必死に取り繕おうとしても頬は依然熱を帯びたままだ。
「本当にごめんなさい。そんなに好きだったのに、嘘をつくような真似して」
「いえいえ、大丈夫ですよ。神凪さんが本庄君のこと好きじゃなくて弄んでるような人だったら怒ったかもしれないですけど、神凪さんも本庄君のこと好きなんですよね?」
「--へっ?」
千紗乃は声を裏返させ、顔を真っ赤にしている。
千紗乃が僕のことを好きだなんて藤田さんの勘違いなことくらい分かっているが、僕は仕返しをしてやることにした。
「千紗乃、もしかして僕のことが好きなのか?」
「好き……寄りかもね」
「へ?」
千紗乃がデレた……?
ていうか『好き寄り』ってなんだよ⁉︎
そりゃ嫌いとか普通とかよりは嬉しいけど、要するに中の上的な立ち位置ってことか⁉︎
千紗乃の発言に再び顔を好調させた僕だったが、どうやら千紗乃は僕以上に顔を紅潮させていたらしくその場から走り去ってしまった。
「本庄君、これから覚悟してくださいね‼︎」
千紗乃の後を追うように藤田さんもそう言葉を残して走り去っていき、僕は一人取り残されたのだった。
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