直前の暴走!?
俺と御曹司・砂川成重が対決する時がやってきた。
それぞれがジュエリーショップの集客イベントを開催し、どちらが結果を出すことができるかという内容だ。
駅前でイベントの準備を終えたちょうどその時、音水が声を掛けてきた。
「笹宮さん。キャンペーンスタッフの配置が終わりました」
「ありがとう、音水。開始まで少し時間がある。それまでゆっくりしよう」
「はい」
俺達の企画は駅前やショッピングモールで夏祭りを模したイベントを開催して注目を集めるというもの。
対して成重は動画配信で芸能人を使ったトークショーだった。
金にモノを言わせて目立とうとする成重らしい戦略だ。
音水は今日のスケジュール表を見ながら訊ねてくる。
「午後五時にイベント対決の結果発表を人を集めてするんですね」
「ああ。ジュエリーショップの来店者にアンケートを取るんだ」
「それって、芸能人を使った成重さんの方が有利過ぎませんか?」
「リアルのイベントだからこそ与えられるインパクトがあるから大丈夫だろう」
ちなみに夏祭りを模したイベントのアイデアは、この前楓坂と言ったスパ施設を参考にしている。
さすがに足湯は用意できなかったが、和柄の傘をオブジェに使ったり、屋台と提灯を並べてお祭り感を出してみた。
「あとは夕方の結果発表を待つだけだな」
そう言って、俺は事前に用意していた指輪の入った化粧箱を取り出した。
結果発表の時にこれを楓坂に渡すというのが、結衣花が提案したサプライズだ。
もちろんイベント対決に勝利しないといけないわけだが、まぁそれは大丈夫だろう。
今回の企画は手ごたえがある。
……と、音水が化粧箱に気づく。
「それ、なんですか?」
「ああ。実はこの前ジュエリーショップで購入したものなんだ。結果発表の時にちょっとしたサプライズを仕掛けようと思ってな」
「サプライズ!?」
その言葉を聞いて音水は立ち上がった。
「ジュエリーで……さ……サプライズってことは……つまり!」
わなわなと震える音水。
どうしたんだ?
そうか! 結衣花が提案したサプライズ内容を見抜いたんだな!
音水は仕事もできるし、センスもあるからな。
たまに勘違いはするが、俺達の考えを見抜くくらいのことはできるだろう。
「バレてしまったな。音水の予想通りだ」
俺がそう言うと、音水は両手を握りしめて「よっしゃああぁぁぁぁぁ!!!」と叫ぶ。
びびったわ! なんでいきなり叫ぶんだよ。
「……どうしたんだ?」
「だってジュエリーでサプライズってことは、渡すのはもちろん女性ですよね!」
「まぁ……、そうだな」
「きゃー! もう、最高のシチュエーションじゃないですか!!」
両手の拳をぶんぶん振り回して喜ぶ音水。
まるで自分が貰うかのような反応だ。
「たぶん目立つとは思うが、叫ぶほどのことなのか?」
「当たり前じゃないですか! 対決の後にプレゼントなんて、喜ばない女性はいませんよ! きゃー! 私、どんなリアクションすればいいんだろう!」
楓坂に指輪を渡すのに、どうして音水がリアクションを考えるんだ?
まさか自分が貰うと勘違いして……って、それはないよな。
たぶん観客としてリアクションをするという意味だろう。
すっげぇな。こんなわずかな会話でリアクションのことを考えるなんて、なかなかできないぜ。
……と、ここで音水は興奮で振り回していた手を止めた。
「でもこれってサプライズなんですよね?」
「ああ、そうだけど?」
「私が知っちゃったら、サプライズにならないんじゃないですか?」
んんん? なんでだ?
楓坂には黙っているからサプライズになるんじゃないのか?
あ、そうか。
こういうのって仕掛ける本人以外に喋っちゃダメなんだ。
俺、サプライズなんて仕掛けたことないから、この辺の加減がわからないんだよな。
でも音水はスタッフなわけだし、セーフということでいいだろう。
「そこはいいんじゃないか。それに驚きを与えるのは渡す相手だけじゃなくて、観客に対してもだ。音水が知っておいた方が、スムーズに事を運べるだろ」
この説明を聞いた音水は深くうなずいて、親指を立てた。そして瞳がきらりんと光る。
「なるほど! 完璧ですね!」
「俺、完璧?」
「超完璧です。パーフェクトですよ」
「はは……、なんか照れるなぁ」
「完全無欠のパーフェクトサプライズです! さすが笹宮さんですね!」
「そっかぁ。そこまで言われると自信がつくよ。ありがとう、音水」
「はい! 楽しみにしています! ついに私に幸運が……」
音水のやつ。まるで自分のことのようにワクワクしやがって。
これでこそ、イベントスタッフだよな。
うんうん。
■――あとがき――■
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次回、イベント対決はとんでもない波乱!?
投稿は【朝7時15分頃】
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