通勤電車の助言。それはまさかの!?
通勤電車に乗りながら、財閥の御曹司・成重とのイベント対決について考えていた。
経験値なら圧倒的に俺の方が上。
だが、成重は資金力にモノを言わせてくるだろう。
勝てる見込みがないわけではないが、かといって油断できない状況ではある。
さて、どうしたものか……。
そんな事を考えていた時、いつのも女子高生が電車に乗った。
「おはよ。お兄さん」
「よぉ、結衣花」
結衣花は俺の隣に立ち、いつものフラットテンションで雑談を始める。
今日は最近挑戦を始めたスイーツ作り。その後はイラスト制作についてだ。
話の内容も俺にわかりやすいように話してくれるので、自然と会話が弾む。
すると結衣花はおもむろに訊ねてきた。
「そういえば、楓坂さんとはうまく行ってるの?」
「まぁな」
「本当?」
「……うまくは行っているが、進展はない」
「だよねー」
しみじみとそう言って頷く女子高生。
まぁ、大の大人が付き合い始めてキスすらしていないのだがから、反論できない。
「二人ともさ、なんでそんなに奥手なの?」
「いちおう言っておくが、俺から手を出さないのは幻十郎さんに釘を刺されているからだぞ」
結衣花は目を細くして、俺を見る。
「それはお兄さんの言い訳でしょ。本当は先に進むと楓坂さんの態度が変わるかもとか思ってるんじゃない?」
「うっ……。女子高生なのに鋭いな……」
「こんなの日常会話で誰でも話してるって……」
だが、こういうのってタイミングなんだよな。
俺がその気になっても楓坂の気持ちもあるし、例え二人の気持ちが高まっても横槍が入る時だってある。
例えば、ヤカンの音とか……。
いや、それは関係ないか。
結局、俺と楓坂は恋愛が苦手という事なんだ。
そのことを理解している結衣花は、困ったようにため息をついた。
「でもさ。御曹司さんとの婚約解消もあるし、お兄さんから積極的に動かないとダメだと思うよ」
確かに結衣花の言う通りだ。
楓坂の方から積極的になることは、あまりない。
ここは俺がビシっとリードをする場面だろう。
……と、そうそう。
御曹司との対決について、結衣花に報告しておくか。
「そういえば、楓坂と御曹司の婚約解消に向けて、進展があったんだ」
昨日あった出来事を簡単にまとめて結衣花に伝えた。
すると彼女はゆっくりと頷く。
「そっか。じゃあ、お仕事対決をして勝つことができればいいんだね」
「まぁな」
「それで勝算は?」
「五分五分だな。経験なら俺の方が上だろうが、向こうは資金力でゴリ押ししてくるつもりだろうから」
「そっかぁ……」
「確実に勝つために、なにか新しいアイデアが欲しいな」
そう。イベントで重要なのはアイデアだ。
いくら金を積んでも、効果的なアイデアがなければ無駄になってしまう。
逆に言えば、そのアイデアを得ることができれば資金力という不利をひっくり返すことができるというわけだ。
しかしなぁ……。アイデアって考えてポンポン出てくるものじゃないんだよな……。
ここで結衣花は妙案を出してきた。
「うーん。じゃあさ、動画の視聴者さん達に聞いてみたら?」
「でも、ストーカーが捕まったから、カップルユーチューバーはもうやめたんだぞ?」
「でもお兄さん、不定期に実況ゲームやってるじゃん」
「……知ってたのか」
「うん」
そう。ストーカーが捕まって以降、カップルユーチューバー活動はやめた。
だが、動画投稿の面白さに目覚めていた俺は、たまに実況ゲームをおこなっていたのだ。
「俺のチャンネルに来てくれる視聴者さんはノリがいいからな。結構前向きに意見を出してくれるかもしれない」
「うん。きっとなにかヒントをくれるはずだよ」
視聴者さん達には世話になりっぱなしだ。
いつも元気をくれる。
なにかお返しがしたいな。
「そうだ! お礼というわけではないが、俺の『歌ってみた』を披露してみるか」
「やめて」
■――あとがき――■
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
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次回、実況ゲーム動画のコメントが大荒れ!?
投稿は【朝7時15分頃】
よろしくお願いします。(*’ワ’*)
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