音水ちゃんのコスプレ衣装
土曜日。
イベントの仕事を終えた俺は、スタッフルームへ戻った。
「さぁて、仕事も終わったし、早く帰るとするか」
ユニフォームを脱いでスーツに着替え直した時、音水が戻ってくる。
「笹宮さん、お疲れ様です」
「おう。お疲れ。今日の仕事は大変だっただろ。帰ったらゆっくり休めよ」
「ありがとうございます。笹宮さんはいつも優しいですね」
ほくほく顔で喜ぶ音水。
普通に体調を心配しただけなのだが、彼女にとっては特別な優しさのように感じたのだろう。
「あれ?」
音水は部屋の隅に飾られている『姫騎士』の衣装を見て声を上げた。
それは新作ゲームのキャンペーン用に用意されたコスプレ衣装。
かなり大胆なデザインだが、細かな装飾のおかげでエロさよりも神秘性の方が高い印象に仕上がっている。
「イベント衣装、置きっぱなしになってますよ?」
「それは明日使うものなんだ」
俺達がそんな会話をしていた時、ドアを開いてクライアントの女性が入ってきた。
「お疲れさま。笹宮君」
「あっ! お疲れ様です」
彼女は大手ソフトウェア会社の広報担当。
先日のセレブパーティーで俺に声を掛けてくれた旺飼さんの部下だ。
長い髪に抜群のスタイル。
少し気が強そうに見えるが、いかにも仕事ができそうな雰囲気を醸し出している。
「今日のイベント、とてもよかったわ。こんなにスムーズに仕事を回せるなんてさすがね」
「俺だけの力じゃありませ。皆のモチベーションが高かったおかげですよ」
本心からの言葉だったが、彼女は謙遜をしているように受け止めたようで、「ふふっ」と年下の男の子を見るような目で微笑む。
「うわさで聞いたけど、セレブが集まるパーティーで注目されたんでしょ? 知り合いのジュエリー会社の社長があなたのことを探ってきたわ」
「はは……、どこにでもいる普通の会社員なんですけどね……」
ジュエリー会社の社長と言うのは、旺飼さんと一緒にいた金髪の女性のことだろう。
パーティーの時も積極的に声を掛けてきたし、その後もメールで挨拶をしてくれたんだよな。
期待をしてくれるのは嬉しいが、俺はそこまですごい事はできないんだけど……。
ふと、女性担当者は俺の隣にいる音水を見て、ニヤリと笑う。
「ふぅん……、こっちもなかなか……」
「……え?」
「ねぇ、あなた。たしか音水さんよね? ちょっとだけ、ここにある『姫騎士』の衣装を着てくれない?」
「私ですか?」
「ええ、そうよ」
女性担当者はカバンからファイルを取り出し、次に行う企画内容のページを開いた。
「さっき少し話に出たジュエリー会社と今度コラボをするの。その時にモデルをしてくれる人を探していたの」
「ええぇ~っ!? 私がモデル!?」
コラボ企画か。
たぶんイベントも開催するだろうから、ここで恩を売っておけば俺達の会社に仕事を振ってもらえるかもしれない。
とはいえ、音水がモデルか……。
彼女のスーツ以外の姿を見てみたい気持ちはあるが、あまり押し付けたくもない。
だが女性担当者は悪巧みを考えていそうな表情で音水に近づいた。
「お願い! ちょうどイメージにピッタリなの。それに……、笹宮君もあなたのコスプレに興味深々みたいよ」
こら! まるで俺がエロ心丸出しみたいに言うな!
そんなふうに言ったら、音水だって嫌がるだろ。
……と思ったが、
「速攻でやらせて頂きます!!」
なぜか音水は間髪入れずに了承した。
それからしばらくして、音水は姫騎士の衣装に着替える。
「ど……、どうでしょうか?」
「へぇ。可愛いじゃないか。これは新発見だな」
「嬉しいです! もうこのコスを花嫁衣装にしたいくらい!」
「それ、設定上では戦闘用ドレスなんだけど」
「つまり、夜のバトルってことですか!?」
「言いたいことがよくわからんが、たぶん違うぞ」
■――あとがき――■
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
☆評価・♡応援、とても励みになっています。
次回、自宅でパーティー!?
投稿は【朝7時15分頃】
よろしくお願いします。(*’ワ’*)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます