ハロウィンに向けて
十月最後の金曜日。
俺の日常はやはり通勤電車で始まる。
朝はこうして、のんびりと過ごすのがいい。
「おはよ。お兄さん」
「よぉ、結衣花」
今日も女子高生の結衣花が声を掛けてくれる。
この挨拶がないと、今一つ調子が出ない。
「ねぇ、週末の土曜日にお兄さんの家でハロィンをするって聞いてる?」
「楓坂とホームパーティーをするんだろ? 部屋なら好きに使ってくれ」
そういうと、結衣花は残念そうな表情になった。
「お兄さんは参加できないの?」
「イベントの仕事があるからな。月末の土日はどっちも仕事だよ」
ハロウィンは今や、バレンタインを超えるほど存在感のあるイベントだ。
俺が今回対応する仕事もそうだが、派手なものが多い。
比例して仕事も大変なものが多いのだが……。
「夜は帰ってくるんでしょ?」
「まぁ、そりゃあ夜は帰るが……。もしかして、待っていてくれるのか」
「うん。せっかくだし、みんなで楽しみたいでしょ」
そうか。結衣花は楓坂とだけではなく、俺とも一緒にハロウィンを楽しみたいのか。
こういうのって嬉しいな。
「わかった。できるだけ早く帰るようにするよ」
「うん」
疲れて帰った時にご馳走が待っていると考えれば、素晴らしいことだ。
早く帰って、損をすることはないな。
「ちなみに、私も楓坂さんもアニメキャラのコスプレするんだよ」
「え!? マジで!!」
「……驚きすぎじゃない?」
「いや……、だって二人とも、コスプレするキャラじゃないから」
てっきりフェイスペイントをしてマントを着る程度だと思っていたが、まさかアニメキャラのコスプレだったとは……。
「ちなみにどんなキャラをするんだ?」
「んー。私は魔法少女」
「ほう」
魔法少女か……。
小柄な結衣花にはピッタリかもしれない。
きっと可愛いだろうな。
すると結衣花はとんでもない一言を放った。
「えっち」
「なんでだよ」
「いま、いやらしいシーンを想像したでしょ」
「してないって」
「本当?」
「神に誓って」
まったく、飛んだ濡れ衣だぜ。
確かに可愛いだろうなぁ~とは思ったさ。
だけど、えっちな想像はしていない。
「じゃあ、楓坂は何をするんだ?」
「ソシャゲからアニメ化したキャラのコスプレ」
「ほほう」
ソシャゲキャラかぁ!
俺もたまにソシャゲするんだけど、胸の大きな女性キャラが多いんだよな。
レア度が上がるほど、露出が増えるというのがソシャゲの法則。
Iカップの楓坂なら、期待しかない。
そして結衣花の一言。
「えっち」
「だから、なんでそうなるんだよ」
「胸の谷間が開いた、大胆なコスプレを想像したでしょ?」
「……」
くっ! 今回は言い返せない。
「ねぇ、答えてよ」
「……あ、……ああ。えっと……、そんなことない……ですよ」
「ウソっぽいなぁ……」
いや、しかしだな。
楓坂のスタイルとソシャゲのキャラを想像したら、無意識にエロっちぃ衣装を想像してしまうだろ。
俺は無罪だと主張したい。
ここ結衣花はカバンからスマホを取り出した。
「焦らすだけだとかわいそうだから、ちょっとだけ見せてあげる」
画像フォルダを開いた結衣花は、ちらっとコスプレした自分の姿を見せる。
半分くらいしか見えなかったが、そこには白と黄色が印象的な魔法少女の姿があった。
「え!? 今の結衣花か! もう一回見せてくれよ」
「だーめ。見たかったら、次の土曜日には早く帰ってきて」
くっそぉ!
こんなことをされたら、楽しみなるに決まってるじゃないか。
「よし! じゃあ、すっげぇ頑張って早く帰るか」
「ちなみに、お兄さんの衣装も用意しているからね」
「え?」
「セリフも用意してるから」
「え!?」
ちょっと待たんかい。
衝撃的すぎるだろ……。
■――あとがき――■
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
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次回、仕事を早く終わらせたい笹宮に音水が!?
投稿は【朝7時15分頃】
よろしくお願いします。(*’ワ’*)
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