自宅で仮装パーティー


 自宅のマンションに到着した俺は、玄関のドアを開いた。


「ただいま」


 だが、室内は真っ暗。

 おかしいな。今日はこの部屋でハロウィンパーティーをすると言っていたはずなのに。


「……誰もいないのか?」


 俺が声を出した時、突然『パァン! パァン!』と二つのクラッカーが鳴る音がした。


「おかえりなさい」

「おかえりー」


 現れたのは楓坂と結衣花。

 二人ともいつもとは違う衣装で現れた。


 結衣花は予告通りの魔法少女。

 白のブラウスに黄色のスカート。そしてベレー帽が特長だ。

 肩に白いウーパールーパーのような人形をくっつけている。


 気合の入ったコスプレだな。

 そういえば結衣花はオタ女子だっけ。


「俺が帰ってくるのを待っていてくれたのか」

「当たり前でしょ。お兄さんのコスも用意してあるから着替えてね」

「マジだったのかよ……」


 本当に用意していやがったのか。

 俺のコスプレなんて需要ないぞ?



 ……と、俺は結衣花に隠れるように立っている楓坂に気づいた。


 楓坂もコスプレをしているのだが、体を紺色のマントで隠しているのでハッキリとキャラがわからない。

 でも見覚えがあるんだよな……。


 俺がジロジロ見ていると、楓坂は伏し目がちに訊ねてきた。


「なに?」

「いや……。マントでどんな格好をしているのか、よくわからないから」

「このままでもいいでしょ?」

「恥ずかしいのか?」

「これは、こういうコスプレなの」


 いや、違うだろ。

 髪飾りが特長的だから、なんとなく知っているんだって。


 んんん~。喉の奥まで答えが出かかっているんだけど……。


 結衣花が俺の裾を引っ張る。


「お兄さん。ご馳走も用意してあるから、早く着替えて食べようよ」

「ああ、わかった」


 こうして俺は自室に戻り、用意されていた衣装に着替えた。


 黒いローブに内側に紫のガウン。

 そして骸骨のマスク……って、これ、絶対に悪役だろ。


「おい……、なんだこれは……」

「大人気の魔王様。お兄さん、似合ってるよ。ぷぷぷ」

「棒読みで笑うな……」


 あー、思い出した。

 これ魔王が主役の作品だ。

 ラノベでヒットして、アニメ化・映画化もされた人気作なんだよな。


 しかし、なんで俺のコスプレが魔王なんだ?

 そりゃ無愛想な顔をしているから、正義の味方って感じじゃないけどさ。


 だが、実際にコスプレをしてみると、妙に気分が乗ってくる。

 なんとなく強くなったようだ。


「ドクロの仮面をつけると、つい『くっくっく……』と笑いたくなるな」

「中身がお兄さんだから、迫力は全然ないけどね」

「貴様、我が魔力で消し去るぞ」

「ノリノリじゃん」


 さすがに食事をする時は仮面を取らないといけないが、これいいな。

 なるほど。コスプレにハマる人の気持ちがわかるような気がする。


「でも結果的に、楓坂さんとお似合いでしょ?」

「なんで?」

「楓坂さんは聖女のコスプレだから」

「え? そうなのか?」


 楓坂は恥ずかしそうに半身になり、少しでも体を隠そうとした。


「み……、見ないでください」

「俺もここまでやってるんだから、いいじゃないか」

「うぅ……。仕方ないですね」


 ようやく諦めた楓坂は、衣装が見えるようにマントを開いた。


「おぉ、知ってるぞ。英雄召喚のゲームの聖女様じゃないか!」


 楓坂がコスプレをしているキャラはゲーム内でも人気で、いろいろなバージョンが発表されている。


 カツラを被っていないし、メガネをかけたままなのですぐにわからなかったが、俺も好きなキャラだ。


「ど……、どうでしょうか……」

「似合ってるよ。可愛い」

「か……可愛い!? ぅぅ……」


 顔を真っ赤にする楓坂。

 涙目になりながら、それでも嬉しそうにしている。


 本当にかわいいな。

 このまま抱きしめたくなるぜ。


 すると結衣花がパンパンと手を叩いた。


「ほら、二人とも。いつまでもイチャイチャしてないで、写真撮ろうよ」

「そうだな」


 こうして俺達は撮影を行った。

 そして食事をすることにする。


「じゃあ、食事にするか」

「そうですね」

「うん」


 俺はさっそく、近くにあった骨付き肉を手に取った。


「くっくっく……。今宵の食事は誠に美味そうではないか。存分に楽しませてもらおう」

「笹宮さんって、意外とノリがいいですね……」



■――あとがき――■

いつも読んで頂き、ありがとうございます。

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次回、結衣花がお泊り!?


投稿は【朝7時15分頃】

よろしくお願いします。(*’ワ’*)

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