結衣花のお泊りでなにをする?
土曜日の夜。
自宅で行われるハロウィンパーティーは今も続いていた。
新しい衣装に着替えた結衣花はポーズを決める。
今度は異世界の魔法少女のコスプレだ。
「エクスプロージョン」
このコスプレは、ラノベ発でアニメで大人気になった異世界コメディ作品のヒロインだ。
かなりの人気作で、お得意先の子供も良くマネをしていたっけ。
「似合うじゃないか」
「ありがとう。私が初めてコスした衣装なんだよね」
へぇ。つまりこのコスは結衣花の原点というわけか。
これは貴重なものを見ることができた。
「ちなみに、楓坂さんが初めてコスした時の写真がこれ」
「ほほぅ」
結衣花がスマホをタップして画像を表示した。
そこには日本刀を持った女剣士のコスプレをした楓坂がいる。
蝶の髪飾りが似合う、お姉さんキャラだ。
もっと楓坂のコスプレを見ようと画像を覗き込んだ時、楓坂が叫びながら突撃してくる。
「きゃあぁぁぁぁ!! 結衣花さん! 昔の写真はなしですよ!」
「え? ダメ? かわいいのに」
「ダメェェェぇ!!」
よっぽど恥ずかしいのだろう。
聖女のコスプレをした楓坂は顔をまっかにして、両手をブンブンと上下させている。
控えめに言って面白い。
「いいじゃないか、楓坂。かわいいから見せてくれよ」
「ん~っ! こういう時だけSっ気を出して……」
「くっくっく。楓坂が恥ずかしがる姿は、愉悦であるぞ」
魔王コスをしているせいなのか、普段よりも強気な俺。
あとで絶対に仕返しされそうだ。
だけど楓坂のこんな姿はめったに見れない。
ここで楽しまないなんて、彼氏としてありえないだろ。
そうこうしているうちに時間は過ぎ、夜の十時を超えた。
パーティーが終わり、俺達は後片付けを始める。
「結衣花。今日は泊って行くんだろ? 一番風呂に入っていいぞ」
「ありがとう。すぐに出るから待ってて」
「ゆっくりしてくれていいよ」
結衣花は区切りのいいところまで片づけをした後、そのまま浴室へ向かった。
俺と楓坂もも片付けを終えて、ソファに座ってくつろぐことにする。
「ふぅ~。ハロウィンをこんなに楽しんだのは初めてかもな」
「笹宮さんって基本ボッチですから、パーティーなんてしないものね」
「悔しいが否定できん……」
そうなんだよな。
ずっと一人だった社会人の俺が、こんなふうに学生のように楽しめるなんて想像もしていなかった。
「楓坂と一緒に暮らすようになってから、いろんなことが変わり始めたな」
「それはお互い様よ。私も毎日が変わり始めて、すごく楽しい」
俺は彼女の手に触れ、そして抱きしめた。
「……どうしたの? さっきまでSっ気全開だったのに」
「だからよけいに可愛がりたくなった」
「ふふふっ。変な人」
毒舌気味に話しながら、それでも嬉しそうに甘い声をだす楓坂。
そんな彼女は無性に愛おしいと感じる。
「コスをしたまま、キスする?」
「いいのか?」
「したい……」
もう俺も我慢できない。
普段とは違う雰囲気ということもあり、俺達は唇を近づけた。
だが……その時、結衣花の声がした。
「お風呂あがったよ~」
俺と楓坂は飛び上がるように離れ、壁際まで一気に距離を取る。
そこにやってきた湯上りの結衣花は、俺達の妙な行動を見て困惑した顔を浮かべた。
「……なんで二人とも、部屋の端に立ってるの?」
「いやぁ……、はは……」
少しハプニングはあったものの、俺と楓坂も風呂に入り、あとは寝るだけとなった。
リビングに結衣花と楓坂の布団を敷いて、俺は自分の部屋に戻ろうとする。
すると結衣花が声を掛けてきた。
「おやすみなさい、お兄さん。今日は楽しかったよ」
「俺もだよ」
そして楓坂も……。
「笹宮さん、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
と、ここで楓坂は声を出さずに、唇だけで何かを言う。
その内容は『すき』の二言。
こういう乙女チックなところが、たまらなくかわいいんだよな。
■――あとがき――■
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次回、御曹司が再び登場!?
投稿は【朝7時15分頃】
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