サプライズプレゼント


 仕事を終えた後、俺は結衣花と待ち合わせをしている駅ビルの入口に来ていた。


 待ち合わせ場所で待っていると、おめかしをした結衣花がやってくる。


「お待たせ」

「いや、大丈夫だ。それで、これから俺は何をすればいいんだ」


 今日の目的は俺と楓坂がお似合いのカップルになるため。

 しかし、駅ビルに来てなにをするというのだろうか?


 結衣花は言う。


「楓坂さんにサプライズを仕掛けるプレゼントを買うの」

「サプライズ?」


 結衣花はコクンと頷いて、話を進めた。


「二人の関係がなかなか前に進まないのは現状維持に慣れ過ぎちゃっているからだと思うんだよね」

「……つまり、マンネリ化してるってことか?」

「うん。だからサプライズで区切りをつけるの」


 よく海外の映像とかで彼女にサプライズを仕掛けるというものがある。


 てっきり陽キャラ達が騒ぎたいからやっているのだろうと思っていたが、ちゃんと理由があったのか。


「サプライズって、ただ驚かせるだけじゃないんだな」

「そういう目的の人もいるけど、マンネリ防止の効果を狙っている人の方が多いんじゃないかな」

「確かに言われて見ると、ずっと一緒にいるとほどほどの距離の取り方を覚えてしまうんだよな」

「まぁ、それが自然なんだけどね」


 あんまり意識してないけど、俺と楓坂ってお互いに適度な距離を取ろうと行動している節がある。


 日常生活なら問題ないが、いざとなると先の展開に進む時のブレーキになってしまうんだよな。


「なるほど……。わざわざ駅ビルに来たという事は、サプライズプレゼントを買うためってわけだな」

「うん」


 この駅ビルはオシャレスポットとしても人気がある。

 サプライズプレゼントを買うなら、持ってこいというわけか。


「ちなみになんだけど、お兄さんならどんなサプライズプレゼントにする?」

「うーん」


 俺がサプライズプレゼントを買うなら……か。

 やっぱり普通のものだと面白くないし、ここはアレしかないな。


「メイド服とかどうだ?」

「もしかして変態に目覚めたの?」


 どうやらダメだったらしい。

 コスプレに興味があるから、てっきりメイド服だと思ったが……。


 ならば!


「濃厚ニンニクラーメンセット」

「うんうん。美味しいは正義だよね。でもサプライズプレゼントとしてはどうかな?」


 これもダメか。

 となれば、……まさか、アレか!?


「俺がプレゼントボックスに入るとか……」

「それ、リアルですると軽い恐怖だからね」

「だよな……」


 まぁ、これはさすがにないだろうとは思ったけど。


 あれ?

 結衣花が冷たい視線を送っているような……。

 冗談だってわかってるよな?


「しかし、いざサプライズプレゼントってなるとなかなか難しいな」

「むしろここまで外してくるお兄さんに、私は驚愕してるけどね」

「人に驚きと感動を与えるのがイベント会社の仕事だからな」

「お兄さんの見当違いに涙が止まらないね」


 一度大きくため息をした結衣花は、人差し指を立てる。


「じゃあ、ヒント」

「よし、来い」

「お兄さんと楓坂さんはカレカノです」

「照れるぜ」

「話、進めていい?」

「はい」


 よけいな一言は身を亡ぼすと知っているのに、男はどうして言ってしまうのだろか。


 結衣花は咳払いをして気持ちを整える。


「二人は同棲もして、気持ちも伝えあってます。この状況なら『とあるプレゼント』が効果的です。さてなんでしょう?」

「……ある程度関係が進んでから渡すプレゼントか」

「うん。お兄さんも知っている定番のプレゼントだよ」


 なんだろう? 定番のプレゼント?


 俺も知っているってことは、そこまで真新しいものではないという事だよな。


 うーん。

 となるとデジタル系ではないということか。

 今までの話から、そこまで奇抜なものではないだろう。


 もしかして……アレか?


「……指輪?」

「正解」


 結衣花は正解であることを表現するように、人差し指で丸を描いた。


 指輪か。

 言われて見れば、恋人になる前に渡すと重いって言われやすいけど、今の俺達の関係ならちょうどいいプレゼントだ。


 きっと楓坂も喜んでくれるだろう。


 こうして俺は楓坂にプレゼントする指輪を選ぶことにした。



■――あとがき――■

いつも読んで頂き、ありがとうございます。

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次回、指輪選びは楽しい!?


投稿は【朝7時15分頃】

よろしくお願いします。(*’ワ’*)

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