楓坂とソファでイチャイチャ
いろいろなことがあったジュエリーショップのイベントだが、とりあえず無事に終えることはできた。
恋愛バラエティの真似事に関しては不安もあるが、とりあえずは一段落ついたと考えていいだろう。
自宅のドアを開くと、楓坂がいつもの優しい微笑みで出迎えてくれた。
「お疲れさまです」
「ただいま」
「カバン持ちますよ」
「そうか? じゃあ、頼む。ありがとう」
すっげぇ、安心感。
いつのまにか楓坂から新妻感が出るようになったよな。
それに楓坂ってこんなに優しい顔をしていたっけ。
いつまでもそばにいて欲しいって思わせる包容力を感じる。
自室で部屋着に着替えて、俺はリビングにあるソファに腰を下ろした。
くっはぁ~。緊張が抜けたと同時に疲れがドバァーってやってくる。
でもこの瞬間って、妙に充実感があるんだよな。
すると楓坂が温かい紅茶をもってやってきた。
紅茶をすぐ近くの丸テーブルに置き、彼女もソファに座る。
「ご苦労様です」
「とりあえず、当初の目的だった『御曹司との婚約解消』は達成できたな」
「はい、一安心です」
すると楓坂はこちらを向いて、両手を広げた。
「笹宮さん。こっちきて」
たぶんこのポーズをしたということは、彼女の胸に飛び込めという意味だろう。
でもこの予想が間違っていたら、ただの変態だ。
楓坂のIカップに飛び込むべきか、否か……。
くっ! どうすればいい!
どちらかと言えば、飛び込みたいが、いや! だが! しかし!
迷いながらも近づくと、「てやっ」と掛け声を出して、楓坂の方から俺の胸に飛び込んできた。
予想とは逆の体勢ではあるが、結果的に彼女の柔らかい胸の感触が伝わってくる。
「なんだよ。今日はいつにも増して甘えん坊だな」
「だって、ようやく解放されたんですもの。嬉しいに決まっているじゃないですか」
そう。楓坂はずっと御曹司・成重との婚約を気にしていた。
だがそれがなくなったのだ。
その解放感は、俺が想像する以上だろう。
「これからも笹宮さんや結衣花さんと一緒にいられるのね。嬉しい」
そう言いながら、楓坂は俺をより感じようと体をこすりつけるようにしてくる。
「笹宮さ~ん。うふふ」
「まったく。これじゃあ、赤ん坊みたいだな」
「ばぶー」
「ははは」
普段はお嬢様キャラの楓坂が赤ちゃん言葉か。
これはかなりレアだな。
ふと俺は、気になっていた話を切り出すことにした。
「でも……。なんか、悪いな。変なことに巻き込んでしまって」
「恋愛バラエティ企画のことですか?」
「ああ……」
てっきり楓坂も困っていると思ったが、その反応は意外とポジティブだった。
「大丈夫ですよ。レヴィさんから事情は聞いていますから。結衣花さんも戸惑っていましたけど、理解しているって言ってましたよ」
「そ……そうか……」
さらに楓坂は話を続ける。
「それにお爺様がすごく褒めてましたよ」
「幻十郎さんが?」
「こんなメチャクチャなことをして、面白いやつだーって言ってましたね。うふふ」
そうか。結果的に幻十郎さんから評価されることになったわけか。
幻十郎さんみたいな成功者にとっては、こういう予想外の展開の方が評価に繋がるのかもしれない。
もしかしてレヴィさんはここまで先読みして?
いや、まさかな……。
「でも恋愛バラエティの方はレヴィさんがやったことなんだが……」
「でもその状況をまとめて、ちゃんとイベントを進行させたのは笹宮さんでしょ?」
「まぁ……、あそこで俺がテンパるわけにもいかなかったからな」
一度座り直した楓坂は腕を組み、頭を俺の肩に乗せた。
彼女がリラックスしているのが伝わってくる。
「私ね。お爺様が笹宮さんのことを褒めていた時、すごく誇らしい気持ちになれたの。こういうのって初めてだった」
そういう楓坂の声は優しさに包まれていた。
本当に心から安らぎを感じているのだろう。
「私、笹宮さんと心が一つになり始めてるのかも……」
「幸せそうな楓坂を見ていると、俺も同じ気持ちになってくるよ」
「もうっ。そんないじらしいこと言って。このぉー」
「こら。指でいじるなって」
「やーだ。面白いもの。もっとしたいのー」
「あはは。困ったやつだな。でも、そんなことをしていると……」
ピーッ!
そう。ヤカンの笛の音だ。
なんとなくそろそろかなと思ってたんだよな。
「ほら。ヤカン先輩がおかんむりだ」
「……あのヤカン。……いつの間にか先輩扱いになってたのね」
■――あとがき――■
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次回、楓坂と午後をどう過ごす?
投稿は【朝7時15分頃】
よろしくお願いします。(*’ワ’*)
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