朝食の後の衝撃提案
数日が経ち、いよいよ今日は御曹司とイベント対決をする日になった。
朝起きてドアを開くと、パジャマ姿の楓坂と鉢合わせになる。
「おはようございます、笹宮さん」
「おはよう、楓坂」
楓坂も起きて間もないようだな。
しかし、どうしてパジャマ姿で俺の部屋を開けようとしていたんだ? スマホも持ってるし……。
もしかして、起こそうとしてくれたのだろうか?
朝、彼女に起こされるというのは憧れるシチュエーションではある。
ましてや普段は恋愛に消極的な楓坂がそんな行動をしようとしていたなんて、想像するだけでもたまらない。
あ~。こんなことなら、もう少し布団の中で待機しておけばよかった。
楓坂は手を伸ばして、俺の髪に触れた。
「寝グセ、ついてますよ」
「昨日ちゃんと髪を乾かさずに寝たからな」
「可愛いです」
「からかうなって。……あっ! こら、スマホで撮影しようとするな」
「記念にしようと思って。ダメ?」
「ダメだ」
「ケチ」
どうやら起こそうとしてくれていたのは間違いなさそうだが、スマホを持っていたのは寝顔を撮影するつもりだったようだ。
あっぶねぇ……。油断できないな。
こうして俺達は朝食の準備をする。
ダイニングテーブルの上には、目玉焼き・ウインナー・サラダにご飯。
そしてダシが効いたアサリのみそ汁だ。
アサリはひと回り大きく、身はプリップリ。
噛み心地と旨みが段違いでいい。
ダシの取り方も味噌の分量も最良である。
「本当に料理が上手になったな」
「ありがとうございます」
「俺への愛がなせる業って感じか?」
「もともと才能があったからに決まってるじゃないですか」
「よく言うぜ」
朝食を食べながら、俺達は雑談をする。
本当に何気ない、朝の会話だ。
だがこういうのがいいんだよな。
楓坂が小さな口を開いてご飯を食べているところを見ていると、俺の方まで幸せな気分になってくる。
すると彼女はポツリと言う。
「でも、誰かのために料理を作るのっていいですね。その人に喜んで欲しいって気持ちを実感できます」
楓坂が料理好きになったのは俺と同居生活をするようになってからだ。
たぶん今までやってこなかったから、料理が好きと言うわけではなかったのだろう。
さっきは冗談で誤魔化されてしまったが、やっぱり俺のためなんだろうな。うれしいね。
「本当に、いつもありがとうな」
「――ッ! と、突然なんですか!?」
「いや、最近特に頼りっぱなしなところがあるからさ」
「むしろ笹宮さんは甘えてください」
甘えてくれと言われると、そりゃあトコトン甘えてみたい。
今日仕事から帰って来たら、おもいっきり甘えてみよう。
まっ……。たぶん途中で中断することになりそうだけどな。
「そういえば今日はイベント対決の日ですね」
「ああ。楓坂も来るんだろ?」
「はい。結果発表の時までには到着できるはずです」
その時だった。
俺のスマホにLINEが届く。
送り主は頼りになる女子高生、結衣花だ。
『おはよ。お兄さん』
『よぉ、結衣花』
そうそう。結衣花に聞きたいことがあったんだ。
『なぁ、結衣花。もうイベント当日になってしまったけど、楓坂へのサプライズってなんなんだ?』
『うん。そのことを伝えようと思って連絡したの』
楓坂にサプライズを仕掛けるという話を聞いて指輪まで用意した。
だけど今日までサプライズの詳しい内容を結衣花は教えてくれなかったのだ。
『あのね、お兄さん。今日のイベントは、かならずこの前買った指輪を持ってきて』
『それは構わないがどうするんだ?』
『スケジュールだと、イベントの終盤でお兄さんと御曹司さん、どっちの企画が評価されているか発表するんだよね?』
『ああ、夕方くらいかな』
今回のイベント対決は俺と御曹司、どっちの企画が集客効果を出しているのかという勝負だ。
そこで来場してくれた人達にアンケートを取り、夕方に結果発表を行う。
こうすることで俺達の対決そのものを一つのコンテンツにして、お客様に喜んでもらうという狙いだ。
だが、結衣花はとんでもない事を考えていた。
『それでね。その時に、楓坂さんに指輪を渡して欲しいの。もちろんみんなが見ている前でね』
『え!? ……つまり、全員が見ている前で楓坂に指輪を渡せと?』
『うん。でも直前まで楓坂さんには内緒だよ』
『わ……わかった……』
会場には楓坂の祖父・幻十郎さんも来る。
確かにこれならサプライズとして効果は抜群だが……、全員の前で指輪を渡すのか……。
やっべ。今から緊張してきた……。
■――あとがき――■
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
☆評価・♡応援、とても励みになっています。
次回、イベント直前の音水ちゃん!!
投稿は【朝7時15分頃】
よろしくお願いします。(*’ワ’*)
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