楓坂の提案はスパ施設?
「はぁ……」
土曜日の朝、ぼーっとした頭で俺は朝の掃除をしていた。
御曹司・成重とのイベント対決に向けて、新企画を考えているのだが、今のところ停滞中だ。
たくさんアイデアや意見を得ることができたおかげで、今までとは違う視点で考えられるようになった。
だが同時に、せっかく集めた情報をうまくまとめられない。
なんとなくイメージはあるのだが、明確な形にできないでいた。
「さぁて、どうしたものかなぁ……」
モップ掛けを終えてリビングに戻ると、楓坂が朝食の準備を終えて待っていた。
今日のメニューは、サラダにベーコン。
そしてまさかの……目玉焼きだ!
少し前まで卵をキレイに割れずに悪戦苦闘していた楓坂が、今では目玉焼きを作れるまで成長している。
ちょっとした感動だよな。
朝食を食べている時、楓坂が心配そうな表情で訊ねてきた。
「お疲れのようですね。昨日も遅くまで仕事をしていましたし」
「ああ。新企画をまとめきれてなくてな」
「私のためとはいえ、あまり無理をしないでくださいね。心配です」
「すまん。確かに煮詰まっているよな……」
以前ならどれだけ無茶をして疲れていても、こうして心配をしてくれる人はいなかった。
だが、今は違う。
疲れたままでいれば、そばにいる人に心配を掛けてしまう。
それが悪いことではないにしても、俺としては好ましい事ではなかった。
と、ここで楓坂は人差し指をピーンと伸ばした。
「そうだ。一緒にスパ施設にいきません?」
「スパ施設?」
「はい」
スマホを取り出した楓坂は『タッタタン』と画面をタップして、スパ施設のホームページを表示した。
「人気のスパ施設があるんです。宿泊もできますし、いろいろと楽しめるみたいですよ」
俺も何度かスーパー銭湯に行ったことはあるが、ここは特にレジャー施設としての傾向が強いようだ。
今日は特に予定もないし、ここらで気分転換をするのは悪くない。
「面白そうだな。じゃあ、行くか」
「はい」
こうして俺達はスパ施設へ宿泊することとなった。
◆
お台場をぶらりとした後、俺達は目的のスパ施設に到着した。
外観はどちらかと言うと和風をイメージしている。
ビッグサイトが近くにあるのだが、実は今日までここにスパ施設があることを全く知らなかった。
「こんなところがあったのか」
俺にとってビッグサイトは仕事の現場だ。
そのため会場付近を歩いていると、業者の人と会うことも多い。
プライベートでぼけぇ~っと素の顔で歩いている時に、横でニヤニヤしているやつがいると思ったら、よく現場で一緒になる同業者だったという事もある。
素の顔を見られると、すっげぇ恥ずかしいんだよな。
こういう事もあり、普段はあまり近づかないようにしていた。
「結構人気らしいですよ。コラボ企画とかでアニメファンもよく来ていたそうですし」
「コラボって強いよな」
楓坂の説明を聞きながら、俺は新企画のことを考えていた。
実際、イベントにおいてコラボの影響力は計り知れない。
誰がどう見ても失敗だろうと思われていた企画も、コラボがハマれば圧倒的な成功に変わることもしばしばだ。
とはいえ、逆にコラボのバランス調整に失敗してしまうこともあるので、決して簡単というわけではない。
今回の新企画はジュエリー会社だからなぁ。
どちらかというとコラボの調整が難しい。
そんなことを考えていると、楓坂が「てやっ」という掛け声と共に、俺の脇腹をつついてきた。
「てやっ。てやっ。てやーっ」
「なんだよ……」
「また仕事のことを考えていたでしょ」
「……よくわかったな」
「笹宮さんって仕事のことを考えると、すぐに顔に出るからまるわかりなんです」
え? 俺ってそんなに顔に出る方だったかな。
ずっと無愛想な顔って言われてきたから、感情があまり外に出ないタイプだと思っていたんだが。
それとも楓坂の洞察力が優れている?
言われて見れると、楓坂ってよく俺の事を見ているんだよな。
朝食の時も、俺がよく使うドレッシングをちょうどいい場所に置いてくれたりする。
いつの間にか、楓坂は俺の生活の一部になっていたんだな。
「いい? 今日はゆっくり楽しむ! これがミッションですよ」
「わかったよ」
もともと押しの強い楓坂だが、この要求に逆らうことはできないな。
だって、俺のことを考えて言ってくれてるんだ。
嬉しいに決まってるじゃないか。
よし! せっかくの機会だ。
ゆっくりとスパ施設を堪能しよう。
■――あとがき――■
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
☆評価・♡応援、とても励みになっています。
次回、スパ施設を堪能しよう!
投稿は【朝7時15分頃】
よろしくお願いします。(*’ワ’*)
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