実況ゲーム動画で相談を


 自宅に帰って食事や風呂を済ませた俺は、さっそく実況ゲーム動画の準備をした。


 配信が始まると、すぐに多くの人達が挨拶をしてくれる。

 この視聴者のほとんどは、以前カップルYouTuberを見ていた人達だ。


「みんな、こんばんは」


 俺が挨拶をすると、次々と返事がコメント欄に記載されていく。


『おはよー』

『きたきたきたー』

『今日はこの前の続きか?』


 こんな調子で、視聴者さんとの関係は良好だ。


 そして今日はイベント勝負に必要なアイデアを聞く必要がある。

 ゲームをしながらなので気楽に聞くことができるが、やはりこういう場で相談をするのは緊張するな。


「今日は皆に相談があるんだ」


 気持ちを引き締めた俺は、みんなに訊ねた。


『なにがあった? 話してみ』

『初見ですが、聞きます』

『お酒のんでまぁ~す。うぇ~い』


 変な反応もあるが、とりあえず話を進めてみよう。


「実はショップの集客方法で悩んでいるんだ。なにかアイデアがあったら教えて欲しい」


 さすがに詳しいことを話すわけにいかないから、このくらいしか情報は公開できない。


 コメント欄の方は、やはり戸惑う様子がある。


『仕事の相談か』

『集客って言ってもいろいろあるしなぁ……』

『うーん』


 だよなぁ……。


 詳細を話すことができれば、もっといろんな意見のやり取りもできるが『ショップの集客』というだけだと、範囲が広すぎてどうアドバイスをしていいのかわからないはずだ。


 その時、いつもコメントをくれる『甘えたいOLちゃん』さんが書き込みをした。


『いくら仕事とはいえ、どうしてそこまで頑張るんですか?』


 それは的確な質問だった。


 今俺はゲーム配信をしている。

 その状況で視聴者に訊ねるということは、普通ではありえないことだろう。


「そうだな……。簡単に話すと、嫌な男から大切な人を守るためだ」


 甘えたいOLちゃんは、驚く表情の絵文字を打ち込んだ。


『大切な人!? それはいつも傍にいる人ですか?』

「ああ」

『毎朝、挨拶をするような人ですか!?』

「そうだな」

『食事を一緒にしたりしますか!?』

「まあ……、そうだな」


 なんだろう? 甘えたいOLちゃんは何を想像してそんなにグイグイ聞いてくるんだ?


 その時だった。


『よっしゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!!』


 なぜか甘えたいOLちゃんは叫んだ。

 うーん。よくわからんが、協力的ということでいいのだろうか。


 その様子を見ていた他の視聴者たちがコメントをする。


『あのさ……。甘えたいOLちゃんが勘違いしてない?』

『いいんじゃね? いつものことだろ』

『そっか』


 続けて『生意気なJK』さんがコメントをした。


『とりあえず、思いついたことを適当に書き込めばOKってことでいいんじゃない?』

『それもそうだな』

『じゃあ、わいのアイデアを』

『私も書いておきますね』


 こうして配信が終わった。


 始める前は心配していたが、想像以上にアイデアは集まった。

 その中にはいくつか使えるものもある。


 これらの情報をまとめ直して、企画として整えよう。


「さて。アイデアも集まったし、明日も頑張ろう」


 寝る前に俺はキッチンに向かい、水を飲もうとした。

 するとパジャマ姿の楓坂がやってくる。


「笹宮さん……」

「まだ起きていたの?」

「配信動画中の声、聞こえてましたよ」

「……すまん。起こしてしまったか?」

「ううん」


 楓坂は俺の後ろに立ち、そして背中から抱きしめてきた。


「私のために頑張ってくれているんだと思って嬉しかった。でも……」


 抱きしめる力を少しだけ強くして、彼女は言う。


「視聴者さん達だけでなく、私のことも頼ってくださいね」

「ああ、わかったよ」


 こんなに多くの人達から応援されているんだ。

 これは負けられないな。



■――あとがき――■

いつも読んで頂き、ありがとうございます。

☆評価・♡応援、とても励みになっています。


次回、楓坂とお風呂!?


投稿は【朝7時15分頃】

よろしくお願いします。(*’ワ’*)

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