スパ施設でお泊りデート
人気のスパ施設にやってきた俺と楓坂は、さっそく受付を済ませて館内着を着ることにした。
このスパ施設では館内着として浴衣を貸し出している。
せっかくの機会なので、俺達も浴衣を着ることにした。
ピンク色の浴衣を着た楓坂は、恥ずかしがりながら俺にその姿を見せてくれる。
「あの……どうでしょうか? こういうオシャレな浴衣を着るのって初めてなんですけど……」
「へぇ、似合ってるじゃないか」
「ふふっ。嬉しい」
お嬢様のイメージが強い楓坂だが、こういう和の装いも似合うよな。
そうだ。せっかくの機会だし、写真に収めておこう。
「なぁ、写真撮っていいか?」
「え!? 笹宮さんが記念撮影を?」
楓坂は驚いた表情をした。
恥かしがるかもしれないとは、素で驚かれるとは思わなかった。
みんな普通に撮影をすると思うのだが……。
「そんなに驚くことないだろ」
「驚きますよ。だって笹宮さんの方から撮影したいなんて初めての事じゃないですか」
あー、なるほど。そういうことね。
確かに俺の方から写真を撮りたいなんて、初めてかもしれない。
最近の俺って、変わってきたのかもしれないな。
「でもどうせなら自撮りのツーショットがいいですね」
「わかったよ」
楓坂の要求に応えるため、俺は彼女の隣に移動して自撮りモードでスマホを構えた。
すると……、
「えいっ!」
唐突に楓坂は俺に抱きついてきた。
浴衣を着ているためか、普段とは違う彼女の感触が伝わってくる。
「楓坂って普段はお嬢様キャラのクセに、急に幼くなったりするよな」
「ダメ?」
「いや、可愛くていいよ」
「んんんんん~~~~っ!!」
可愛いと言われて恥ずかしかったのか、楓坂は涙目で唸った。
そのしぐさが無性に愛おしいと思い、俺は彼女を抱き寄せる。
そして、パシャリと撮影をした。
「あー! 変な顔をしている時に撮ったぁ~!」
「こういう写真の方が思い出になるだろ」
「消してぇ~!」
「はははっ、ダメだね」
◆
無事に楓坂の浴衣姿を写真に収めることもできたので、俺達はまず足湯を体験することにした。
施設内を少し歩いた先には庭園がある。
すでに空は暗く、庭園はライトアップされていた。
やはりここも和風のモチーフにした飾り付けがされている。
番傘を飾りのように設置するセンスはオシャレだ。
「ライトアップの足湯か。こういう体験は初めてだな」
「素敵ですよね」
隣に座った楓坂が足を使って、俺の足に触れた。
まるで遊ぶように、ちょんちょんと足をくっつけたり離したりする。
「俺の足は楽しいか?」
「はい、とっても。笹宮さんイジリはやめられませんね」
「こいつ、調子に乗りやがって」
そういって俺は楓坂の手を握る。
すると彼女も手を握り返してきた。
夜空を眺めながら、こうして一緒に足湯をするのも楽しいものだ。
◆
お風呂と食事を済ませたあと、俺達は宿泊する部屋に入った。
畳の上に敷かれた布団に入り、電気を消す。
今日一日の満足感が、心地いい疲労感となって襲ってきた。
リラックスできた気持ちを実感できる。
「はぁ~、結構楽しめたな」
「そういえば、こうして布団を並べて寝るのって初めてですよね」
「……そう言えばそうだな」
すると隣の布団で横になっていた楓坂がこちらを見た。
「うふふっ」
「嬉しそうにしてどうしたんだ?」
「だって、こうして宿を取って一緒に寝るのって初めてでしょ。なんだか子供の頃に戻ったみたいで楽しくて」
同居生活をしているとはいえ、俺と楓坂はいつも別の部屋に寝ている。
こうしてちゃんと布団を並べて寝るのは初めてだろう。
いつもと違う部屋で、彼女と並んで寝る。
それは現実でありながら、どこかファンタジーを体験しているような気持ちを与えてくれた。
それは楓坂も同じだったらしい……。
「笹宮さん……」
「どうした?」
「そっちに行っていいですか?」
「それって……どういう……」
「一緒のお布団で、その……寝たいというか……」
■――あとがき――■
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
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次回、一緒のお布団でなにが!?
投稿は【朝7時15分頃】
よろしくお願いします。(*’ワ’*)
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