イベント対決の予想外の行方
ジュエリーショップのイベントは順調に進行し、あっという間に夕方となった。
もうすぐイベント対決の結果発表ということで、俺は駅前のイベントスペースに付近で待機している。
すると俺のほっぺたを指で突っつく人物がいた。
「えーい」
「おい……、楓坂。大人がほっぺプニなんてするなよ……」
「いいじゃないですか。面白いんですし」
「しょうがないなぁ」
楓坂って普段は大人びた淑女ってイメージだけど、結構ガキっぽいこともするんだよな。
でも以前のように毒舌は吐かないようになったから、よしとしよう。
「そういえば、お爺様もさっき到着していましたよ」
「幻十郎さんが? ……そうか、いよいよだな」
「笹宮さんが仕掛けた駅前のイベントも見てきましたけど大盛況でしたね。これなら勝てますよ」
「まぁな」
今回のイベント対決は『成重と楓坂の婚約解消』という目的だけでなく、幻十郎さんに『俺と楓坂の仲を認めてもらう』という目的もある。
そのためにイベント対決に勝利した後、楓坂に指輪を渡すというサプライズを用意しているんだ。
きっとうまく行くはずだ。
「おいおい! なに勝った気でいるんだぁ、コラッ!」
突然、乱暴な口調の男の声がした。
それは御曹司で今回のイベント対決の相手・砂川成重だ。
「こっちは有名芸能人や人気ユーチューバーに金を積んで宣伝してもらってんだ。テメエに負けるわけないだろ」
相変わらずケンカ腰な奴だな。
成重はすぐ近くまでやってきて、ギロリと俺を睨みつける。
「この対決で負けた奴は相手の言う事を聞くって約束を忘れんなよ。笹宮。もうすぐテメェはオレの奴隷だ」
「俺が勝ったら、楓坂との婚約はなかったことにしてもらうからな」
「かっ! 負ける奴が言うセリフかよ!」
そう吐き捨てると成重はステージ裏へ歩いて行った。
あれで上流階級の人間だっていうんだから、たまったもんじゃないぜ。
もともと成重のことを嫌っていた楓坂は、眉をひそめて言う。
「本当に嫌な人ですね」
「そうだな……」
「でも、笹宮さんにはまだ『とっておき』がありますものね」
「え?」
とっておき? 何の話だ?
今日のイベントはもう終わっている。
あとは結果発表だけだ。
あえていうなら楓坂に指輪を渡すサプライズを用意しているが、それは彼女には伝えていない。
俺が戸惑っていた時、トランシーバーから音水の声が聞こえた。
『笹宮さん。イベント対決の結果発表が始まります。早くこっちに来てください』
『ああ、わかった』
楓坂の一言が気になったが、そこまで深い理由はないだろう。
こうして俺はステージに向かった。
◆
ステージの檀上に上がった俺は、予想外の出来事に驚いていた。
なんと結果発表の司会を女社長・レヴィさんが行うことになっていたからだ。
「皆様。今日はお集まり頂き、ありがとうございます。それでは本日のイベントの目玉・イベント企画対決の結果発表を行います」
さすがレヴィさん。
通る声で滑らかに喋っている。
って! そうじゃなくて!
「す……すみません。……どうしてレヴィさんが司会をされているのですか?」
「うふふ。いいからいいから」
おかしいぞ……。
なにかがおかしい。
司会役はイベントスタッフの一人がやることになっていたはずだ。
なのにどうして……。
レヴィさんは俺に構わず、サクサクと結果発表を進めた。
『では、アンケート結果! オープン!』
後ろにあった黒いカーテンを取ると、大きなパネルが姿を現した。
そこには『笹宮チーム153』『成重チーム79』と書かれている。
つまり、俺達の勝利という事だ。
「よし!」
俺が握りこぶしを作って勝利を実感した時、成重が吠えた。
「くっ! ふっざけんなぁ! 財閥の御曹司の俺が負けるわけねぇだろ!!」
納得がいかない成重は俺に掴み掛かろうとした。
だが、それよりも早くレヴィさんが口を開く。
「お待ちください、成重様」
「なんだ、レヴィ! テメェも干すぞ!」
「笹宮さんの企画はまだ終わっていませんよ」
「なっ!? どういうことだ!!」
レヴィさんが片手を上げると、三人の女性が現れた。
それは俺がよく知っている女性達だ。
「楓坂に音水。結衣花まで……。どうして?」
まったく俺が知らないことだ。
どうなっているんだ。
こんな段取り、何も知らないぞ?
するとレヴィさんが説明をしてくれる。
「笹宮君。これからあなたは三人と恋人体験をしてもらいます。そして理想の相手に指輪を送るのよ」
ええ!? どうしてそんなことに!!
■――あとがき――■
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次回、予想外の方向へ向かった理由は!?
投稿は【朝7時15分頃】
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