スタバで結衣花から?


 レヴィさんのジュエリーショップで指輪を買った後、俺と結衣花は駅ビルをぶらついていた。


 しばらくして、ふとスタバがあることに気づく。

 めずらしく混雑は少ないみたいだ。


「よかったらスタバに寄らないか? おごるぞ」

「お兄さんにしては気が利くね。じゃあ、甘えちゃおうかな」


 よほど嬉しいのか、結衣花は俺の腕を引っ張るようにに店内へ向かった。


 店内に入ると、やはり混雑は少なめだった。

 とりあえず先に席だけ確保し、俺達はレジへ向かう。


「さて。俺はいつもの通り、コーヒーのブラックにしようかな」

「ダメだよ」

「自由選択の権利を剥奪されちゃったぜ」


 まさかスタバに来て、コーヒーの注文を否定されるとは思わなかった。


 だが、結衣花にはちゃんとした理由があったみたいだ。

 彼女はメニュー表にある写真を指さして言う。


「今日は、キャラメル&コーヒーフラペチーノが限定発売しているんだから、これにしようよ」


 見るからに美味しそうな外観だ。


 一番下の層にはコーヒーゼリー。そしてコーヒーフローズンクリーム。さらに上にたっぷりのクリームがホイップされている。

 そして仕上げにキャラメルソースがたっぷりと掛けられていた。


 コーヒーの苦味と生クリームってメチャクチャ相性がいいんだよな。

 さらに美味さを引き立ててくれるキャラメルクリーム。

 相性の三重奏じゃないか。


 結衣花がイチオシするだけのことはある。


「ほぉ。確かにおいしそうだな。これなら俺でも楽しめそうだ」

「でしょ。じゃあ、二つ注文ね」

「わかったよ」


 こうして俺達はキャラメル&コーヒーフラペチーノを購入した。


 店員から商品を受け取って、ボックス席に向かい合って座る。


「やっぱりスタバは落ち着くよな」

「お兄さんって、結構スタバが好きだよね」

「まぁな。やっぱり行きなれているっていうのが大きいのかもしれない」


 カフェに来て一番充実感を感じる瞬間はこの座る瞬間なんだよな。

 『リラックスしていいよ』という言葉をささやかれているような気分になる。


 でもそんなことを考えるのは、俺が歳を取ったからなのかもしれない。

 それとも社畜の性なのか。


 まあいいさ。どちらにせよ、このほっこりする時間を楽しめるのなら。


 と、ここで結衣花はとんでもないことを言い出した。


「お兄さんにとってカフェはリラックススペースなんだね。……たとえばぁ~……仕事をさぼる時に立ち寄っているとか?」

「こら」

「ごめんごめん」


 おいおい、なんてことを言い出すんだ。

 俺は真面目な会社員なんだぜ?

 堅実をモットーにお仕事を頑張ってますぜ?


 ちなみに……、『サボっているのか?』という質問に対して明確に否定をしていないのは……、多少後ろめたいことがあるからではあるが、それはあえて伏せておこう。


 フラペチーノを少し食べ始めた時、ふと俺はさっきジュエリーショップで買ったものを思い出した。


「おっと。そういえば、これを買っておいたんだ。もらってくれ」

「なに?」

「さっきジュエリーショップでこっそり買っておいたんだ」


 俺はカバンの中から、縦長の小さな小箱を取り出した。

 プレゼント用に綺麗に包装されてある。


 結衣花は箱を開けて、驚いた表情をした。


「……ペンダント? 私に? いいの?」

「ああ。いつも助けてもらってるからな。ちょっとしたお礼さ」


 今回の件に限らず、結衣花はいつも俺の相談に乗ってくれる。

 それに甘え続けるのはよくはないのだろうが、こんなフワッとした関係を俺は心地いいと思っていた。


「あ……ありがと」

「どういたしまして」


 恥かしそうに唇を尖らせて感謝の言葉を言うなんて、初めて会った時はフラットテンションの無表情キャラだったのに、随分と柔らかくなったものだ。


「あ……あのさ」

「ん?」

「私も買っておいたんだよね。安いものだけど……」


 今度は結衣花がショルダーバッグから小さな箱を取り出した。

 こちらもプレゼントように包装され、リボンまでついている。


 開けてみると、そこには黒のブレスレットが入っていた。


「レザーブレスレット。お兄さん、腕時計をしてないでしょ? これならいろんな服装にも合うと思って」


 結衣花が俺のために……。

 なんだよ。メチャクチャうれしいぜ。 


「ありがとう。大切にするよ」

「うん。私もこのペンダント、大切にするね」



■――あとがき――■

いつも読んで頂き、ありがとうございます。

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次回、結衣花の気持ち? 彼女が語る本心とは?


投稿は【朝7時15分頃】

よろしくお願いします。(*’ワ’*)

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