お隣さんは巨乳美人?


 自宅のマンションに帰った俺は、ソファの上で横になった。


「しっかし、疲れたなぁ……」


 昨日、楓坂がホームから転落するというトラブルがあった。


 おそらく俺が見た『帽子を被った男』が突き落としたのだろう。

 やっぱりストーカーだろうか。


「……てか、なんで楓坂の心配をしてるんだよ」


 助けはしたものの、俺達の仲が悪い事に変わりはない。

 たまに可愛く見えたりするけど……。


 その時――『ドォン!』とすごい音が隣から聞こえてきた。


「なんだ!?」


 驚いた俺はソファから飛び起きる。


 隣はたしか空き部屋だったはずだ。

 部屋を出た俺は、おそるおそる隣の部屋に近づく。

 すると玄関のドアが開いた。


 中から出てきたのは、特盛の大きな胸とメガネが印象的な美人……、楓坂だ。


 Tシャツにホットパンツというかなりラフな服装をしている。


 なんというか……太ももがまぶしい……。


「……えーっと。こんばんは、笹宮さん」

「……おう。……こんばんは。なんで俺の部屋の隣に住んでるわけ?」

「今日引っ越してきたんです。正直、私もどうしてこの部屋なのかわからないんですけど……」


 自分で引っ越しておいて、何言ってるんだ?


 変な話だなと思った時、仕事用のスマホに着信が入った。

 知らない番号だ……。誰だ?


「すまん。仕事の電話だ」


 楓坂に断りを入れて廊下の端へ移動し、俺はスマホを耳に当てた。すると……。


『君が笹宮か』


 渋い声。老人のようだが、声にまとまりがある。

 まるでハリウッド俳優の声優みたいだ。


「はい。そうですけど、あなたは?」

『ワシはゴルド社の会長、幻十郎じゃ。君が助けた楓坂舞の祖父になる』


 ……ゴルド社? はぁ!? ゴルド社!?

 世界的に活躍する総合コンサルティング会社のゴルド社か!?


 しかもその孫が楓坂?


 驚いて言葉を失う俺に、ゴルド社会長の幻十郎さんは話を続けた。


『まず舞を助けてくれたことに礼を言う。その上で頼みがあるのだが、ストーカーから舞を守るため、君に護衛を頼みたい』

「俺……ですか?」

『ああ。警備員を用意しようとしたら、『もしそんなものを付けたら、おじいちゃんの事を嫌いになるから』と言われたんじゃ……』


 あー、楓坂なら言いそうだな。

 絶対に縛られるのは嫌がるだろうし……。


『そこで、君の隣に引っ越しをさせた。舞に気づかれないように護衛をしてくれ。頼む』


 ん~。なんか面倒なことになってきたな。

 だが、ストーカーに狙われているのは本当だろうし、ゴルド社の会長に逆らえるわけもない。


 この人がその気になれば、俺が勤めている会社なんて吹き飛ぶだろう。


 ……しゃーない。やるか!


「わかりました。会社があるのでずっとという事はできませんが、できる範囲で守ります」

『助かる。それと……』


 一度言葉を切った幻十郎さんが、声に殺気を込めた。


『もし……。もし舞に手を出したら、職権乱用でとんでもないことをするかもしれん。くれぐれも気をつけるように……』


 最後にとんでもないことを言って、電話を切りやがった。

 まぁ、間違いなんて起きるはずもないが……。


 すると楓坂がおずおずと訊ねてくる。


「笹宮さん。電話終わりました?」

「ああ」

「それでその……。ちょっとお願いがあるんですが……」

「どうした?」

「今晩、笹宮さんの部屋に泊めてくれません?」

「え……? なんで?」


 楓坂は申し訳なさそうに、自分の部屋のドアを開いた。

 部屋の中は荷物でいっぱいになり、文字通り足の踏み場もなくなっている。


「なんだこれ……。人間が住めなくなってるじゃないか」

「だって片付けようとしたら、散らかっていくんですもの」


 今からこの惨状を片付けることはできないだろうし、このまま放置もできない。


 しかたないな。


「わかった。じゃあ、今日は俺の部屋を使えよ」

「ありがとうございます。これでやっと、お風呂に入ることができます」

「え? 俺の部屋のを使うのか?」

「ダメですか?」

「……別にいいけどさ」


 風呂かぁ……。

 ってことは風呂上りの楓坂と一緒ってことだよな。


 手を出したら破滅……。

 俺の理性、大丈夫かな……。



■――あとがき――■

いつも読んで頂き、ありがとうございます。

☆評価・♡応援、とても励みになっています。


次回、お風呂上りの楓坂とハプニング!?


投稿は【朝と夜:7時15分頃】

よろしくお願いします。(*’ワ’*)

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