音水のアイデア、再び
ファミレスでランチを食べながら、今晩投稿する動画のネタを考えていた。
「むぅ……。次の企画、どうすればいいんだ」
楓坂に企画を任せると、俺がとんでもない目に遭ってしまうからな。
なんとか帰宅するまでに、それなりのアイデアを考えないと。
だが、チャンネルのコメント欄を見ても、俺に被害のない企画が全然提案されていない。
くっそぉ……。みんな俺の泣き顔が見たいとか言いやがって……。
一度気分を変えようとスマホから目を離して背もたれにもたれかかった時、ちょうど後輩の音水が店に入ってきた。
「あれ? 笹宮さんじゃないですか。今日はここでランチだったんですか?」
「ああ。よかったら音水もどうだ?」
「やった! ありがとうございます!」
ぱっちりとした目を嬉しそうに細めて、彼女はリズミカルに俺のところにやってきた。
そのまま空いている前の席に座るのかと思いきや、なぜか椅子を移動させて俺の隣に座る。
ん? なんでわざわざ椅子を移動させたんだ?
「ちょい、待て。なんで俺の隣に座ろうとするんだよ。前が空いてるだろ」
「前……ですか? それは笹宮さんの膝の上ってことでしょうか? さすがにちょっと恥ずかしいかも……」
「もしそんなことをされたら、俺も恥ずかしいよ」
会話がかみ合っていないように感じるのは、俺が疲れているからだろうか。
音水はしぶしぶといった様子で俺の前に移動して、椅子に座り直す。
「まったく。冗談もほどほどにしてくれよ」
「私的には笹宮さんの膝の上にちょこんしてみたいんですけどね」
「……え? マジで?」
「そんなことより、注文しますね。店員さん、すみませーん! とんかつ定食大盛で!」
俺の膝の上に座りたいとか気になることを言っていたが、すでに会話はとんかつ定食大盛になってしまった。
これでは深く追求できないじゃないか。
「音水って話を逸らすの上手だな」
「よく言われます」
……よく言われてるんだ。
「それで、さっきは何を考えていたんですか?」
「ああ。実は……」
おっと、あっぶね。
俺が楓坂と一緒にカップルYouTuberをやっているなんて言ったら、驚かせてしまう。
なにより、正体は明かしたくない。
だから顔出しをしていないんだもんな。
ここは無難に友達の話という事にしておこう。
「実は友達の話なんだが……」
「えっ!? 笹宮さんに友達ですか!?」
「なに、その反応?」
「えっと、はは……。特に意味はないです」
今のって、俺に友達がいないと思われていたってことか?
失礼なやつだな。
俺にだって友達は……、……、……。あれ? 友達は……いたかな?
結衣花って友達になるのかな?
なんか違うよな……。
ええい! 今考えるのはそこじゃない!
俺は強引に話しを元に戻した。
「話を続けるが、友達がカップルYouTuberをしていて、ネタに困っているそうなんだ」
「面白い事をやり続けるって難しいですもんね」
「まぁな」
「カップルYouTuberですか……」
すると音水は腕を組んで考え始めた。
以前音水は『背中から抱きつくシチュエーション』を考えてくれたから、こういう時のアイデアはアテになるんだよな。
さぁて、どんな内容だろうか。
音水は手をポンと合わせた。
「お料理とかでいいんじゃないですか?」
「二人で料理をするのか?」
「はい。私、結構見てますよ。お料理系YouTuberの動画」
そういえば、よくオススメ動画に出てくるよな。
しかも楓坂は料理が苦手だから、俺が主導権を握れる企画じゃないのか! すばらしい!
「うん。いいな、それ」
「まるで笹宮さんがYouTuberみたいな口振りですね」
「友達だよ」
「へー」
音水の「へー」が不自然に棒読みだったが、まぁ気にすることないよな。
よーし! 今日は楓坂と料理動画を作るぞ!
■――あとがき――■
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
次回、自宅に帰ると驚きの光景が!?
★お願い★
すみません。
明日から投稿は1日1回、【朝7時15分頃】になります。
よろしくお願いします。(*’ワ’*)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます