お菓子選びとブロッコリー


 今、俺と楓坂は駅ビルで買い物をしている。


 お目当ての靴を買うことができた楓坂は、上機嫌のご様子だ。

 そんな彼女を見ていると、こっちも嬉しくなってしまう。


「いい靴が見つかってよかったな」

「はい。あとはドライブ中に食べるお菓子でも買いに行きますか?」

「そうだな」


 こうして俺達は食料品売り場に向かった。

 駅ビルの食料品売り場というだけあって、めずらしいものが数多く並んでいるが、定番の商品ももちろん販売されている。


 駄菓子コーナーに到着した俺は、小箱に入ったチョコ菓子を手に取った。


「とりあえず、『きのこのチョコ菓子』は外せないな」


 すると楓坂がすかさず別のチョコ菓子を俺の目の前に持ってくる。


「ちょっと待ってください。王道はやはり『たけのこのチョコ菓子』じゃないですか?」

「いや、普通王道はきのこだろ」

「なに言ってるんですか。多くの人は最初たけのこ好きから入って、その後できのこも好きになるパターンです。なので王道はたけのこでしょ?」

「どこ情報だよ。それ……」


 きのこVSたけのこの戦いは、俺がガキの頃から論戦されていたことだ。


 再び俺と楓坂の対決が始まる……かと思われたが、『とある菓子』を選んだ時、俺達は握手をした。


「盲点だった。お手軽駄菓子『パイのチョコの実』を忘れていたとは」

「そうですね。これを外すなんて邪道をさらにコースアウトするようなものですから」


 結局俺達は、きのこ・たけのこ・パイのチョコの実を購入することにした。


 菓子が入った袋を楓坂が持つのを見て、俺は言った。


「それ持つよ」

「さっき買った靴も持ってくれてるじゃないですか。このくらい、自分で持ちますよ」

「このあとデパ地下で夕食の総菜を選ばないといけないだろ。その時に両手が空いている方が選びやすいじゃないか」

「そう? じゃあ、お願いしようかしら」


 こうして俺は全ての荷物を左側に持った。

 特に靴の入った箱がかさばっているが、そこまで重いわけじゃない。


 すると……、


「えいっ」


 楓坂が突然俺の腕に抱きついてきた。


「どうしたんだ、いきなり」

「私のことを気遣ってくれたから。……笹宮さん、ありがとう」


 こうして素直になってくれると、本当に可愛いやつなんだよな。


 そして俺達は夕食の総菜を買うために、デパ地下へ移動した。


「どれにしようかしら」

「ブロッコリーが入ってなかったら、何でもいいぞ」

「苦手なの?」

「まぁ、ちょっとな」


 ……と、ここで楓坂の瞳があやしく光る。


「ふぅん。いいこと聞きました。ならブロッコリースムージーを買っておこうかしら」

「そんなもん売ってるわけないだろ」


 ブロッコリースムージーなんてあるはずがない。

 そう思ったのだが……。


「あるのかよ……」

「知らなかったの?」


 知ってるわけがない。

 しかも見た目が薄い緑色をしてるし……。 


「ほら、一口飲んでみて」

「えぇ……。待ってくれよ。苦手って言っただろ」

「いいから」


 ここで逃げるのもカッコ悪い。

 しかたがない。


 俺は勇気を振り絞って、ブロッコリースムージーを飲んだ。


「あれ? 普通に美味しい……」

「でしょ」

「へぇ、これなら俺での飲める。いいな、これ」


 たぶん、バナナとかの果物も入っているんだ。

 飲みやすくていいな。


 ふと横を見ると、楓坂がほほえんでいた。


「なんだよ。ニヤニヤして……」

「うふふ。可愛いと思って」

「なんだ、それ」


 そして少しの間を開けてから、楓坂はゆっくりと言う。


「笹宮さん。好き」

「え?」



■――あとがき――■

いつも読んで頂き、ありがとうございます。

☆評価・♡応援、とても励みになっています。


次回、楓坂の告白。


投稿は【朝7時15分頃】

よろしくお願いします。(*’ワ’*)

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