作戦の提案
会社から帰る途中、音水の頭をなでなでしている場面を楓坂に見つかってしまう。
そのことが原因で、楓坂と音水は俺を取り合ってバチバチの火花を散らしていた。
夕食を食べて気持ちを落ち着かせようとファミレスに入ったが、緊張感は全く緩まない。
むしろ悪化したような気さえする。
困った……。
こんな険悪なムードだと、プロポーズ作戦なんてとても無理だ。
こうなったら、俺と楓坂が付き合っていることを音水に伝えよう。
「音水、聞いてくれ。実は俺と楓坂は付き合ってるんだ」
「えっ!?」
驚く音水。
無理もない。俺は今まで仕事一辺倒だった。
きっと今彼女は『真面目で仕事一筋のクールな笹宮さんに、彼女ができたなんて!?』と困惑しているのだろう。
そして音水は言う。
「やっだぁ~! 笹宮さんに私以外の彼女ができるわけないじゃないですか!! ジョークが下手すぎですよ! あははっ!」
メチャクチャ笑われてた。
おっかしいなぁ……。なんか俺の想像と微妙に反応が違うんだけど。
すると隣に座っていた楓坂が小声で訊ねてきた。
「ねぇ、笹宮さん。もしかしてバカにされてるんじゃないの?」
「そんなことはない……と、思いたい……」
そうだ。バカにされてはいないはず。
彼女ができるはずがない……と言う言葉がすごく心にグサッときたが、バカにはしていないだろう。
……うん、きっとそうだ。
もう一度言ってみよう。
「本当なんだ、音水。信じてくれ」
「笹宮さん……。仕事のしすぎで疲れているんですね。かわいそう」
「俺、泣いちゃうぞ」
なんで彼女ができたって報告しているだけなのに、『かわいそう』という言葉が出てくるんだよ……。
しばらくこんなやり取りをした後、俺達はファミレスを出た。
◇
自宅に戻った俺と楓坂はリビングにあるソファに座る。
「結局、信じてもらえなかったな……」
「そうですね……。でも冷静に考えると音水さんの反応もわからなくはないんですよね」
「というと?」
楓坂は言う。
「私と笹宮さんって歳が離れてるでしょ? それについ最近までいがみ合っていたから、距離感が違うように見えるんですよ」
「だから信じてもらえないって?」
「はい。この調子だと、カップルYouTuber活動の方も信じてもらえてないかもしれないですね」
そう言われるとそうかもしれない。
俺と楓坂はこうして同居生活をしているが、年齢差はやっぱり不自然に見えてしまうだろう。
会話だってお互いにけん制しあう時の方が多かったし、いくらカップルと言っても視聴者の人にはバレバレだったのかもしれない。
いや、待てよ。
この状況なら犯人をおびき寄せるために考えた『プロポーズ作戦』を提案しやすいんじゃないか?
よし!
「考えたんだが、次のカップルYouTuberの企画は『プロポーズ』っていうのはどうだ?」
「どういうことですか?」
「よくプレゼントでサプライズをする話があるだろ? それを俺と視聴者でやるんだ」
これなら視聴者にこっちの本気度が伝わるはずだ。
つまりそれは、こっそり楓坂を付け狙っている真犯人をおびき出す材料になる。
だけど楓坂には心配をかけるから、俺がおとり役になるという部分は隠しておこう。
「でも……」
躊躇する楓坂。
これも予想通りの反応だ。
偽装とはいえ、結婚は抵抗があるか。
あと一押し必要だな。
「そういえばさっき、楓坂は『私も、笹宮さんのモノになります』って言ってたよな」
「あ! あれは……、言葉のあやというか……、その場の勢いというか……」
嫌がってはいないみたいだけど、ふんぎりがつかないと言ったところか。
俺としてはこのまま本当に結婚することになってもいいくらいの気持ちなんだが……。
とはいえ、まだ付き合って間もないのにそんなことを口にしたら引かれてしまうだろう。
どうすればいいのかと考えていた時、ずっと腹の底に抱えていた本音をポロリと言ってしまう。
「俺は楓坂を独占したいんだけど……」
……あ!
ああああああ!!!
とんでもないことを言ってしまった!!
そりゃあ独占したいけどさ、そんなこと口に出したらダメだろ!!
楓坂はその言葉を聞いて、慌て出した。
「んんんんんんん~~~~~~っ!!!!」
そして、
「……あ。……。……。……倒れそう」
「楓坂ぁぁぁぁぁぁッ!!!」
またのぼせた楓坂は、ソファに倒れ込んでしまった。
■――あとがき――■
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次回、いよいよ直接対決! 真犯人をおびき寄せる!?
投稿は【朝7時15分頃】
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