通勤電車で女子大生を助けたら、なぜかつきあうことになりました~嫌われているはずなのに、なぜか彼女は俺にデレる
甘粕冬夏【書籍化】通勤電車で会う女子高生
第一章
触ってもいいですよ
「胸、触っていいですよ」
二人っきりの部屋の中。
長い黒髪を耳に掛け、メガネを掛けた女子大生はそう言った。
ブラウスの隙間から、推定Iカップの大きな胸の谷間がわずかに見える。
俺も男だ。胸に触りたいかと聞かれれば、正直に言うと触りたい。
しかも、たわわだ。
すばらしく、たわわだ。
もしこの女子大生でなければ、触っていただろう。
だが、どうしても触れない理由がある。
俺のそんな葛藤に気付かず、女子大生はさらに近づいた。
そして上品な口調で、妖艶にささやく。
「触りたいんでしょ? 少しだけならいいですよ?」
「で……できるわけないだろ」
「触りたいくせに。二十七歳なんてエロいことしか考えてないんだから」
「言っておくが、俺はまだ二十六だ」
「今年の誕生日で二十七歳でしょ? オ・ジ・サ・ン」
「二十代はまだお兄さんだからな」
「うふふ。無駄な足掻きが、とってもとっても滑稽ですね。
俺の名前をわざわざフルネームで言ったのは、おちょくっている時の彼女のクセだ。
まるで女神のようにほほえむ女子大生の名前は、
俺は今、彼女と同棲をしている。
「で、触るの? それとも揉みたいの?」
「なにもしないという選択肢はくれないのか?」
「そんな選択肢、面白くないでしょ?」
俺はふーっと、息を吐いた。
こいつ……、俺が触らないと思って調子に乗り過ぎだろ。
だったらこっちにも考えがある。
「じゃあ、聞くが……本当に触ってもいいんだな。本当に触るぞ。マジで触るぞ」
俺は右手をグーパーグーパーして、本気で触ろうとしているアピールをする。
もちろん本気で触るつもりはない。
そんなことをしたら、後で痛い目を見るのは俺だ。
だが、だとしても!
ここでなにか反撃をしておかないと腹の虫が収まらない。
すると楓坂は予想通り、顔を真っ赤にして取り乱し始めた。
「待って。待って待って……。心の準備をさせて……。というより、やっぱりなし。……今日はちょっと……調子が悪いの……。本当よ」
自分で言っておいてこれだよ。
この楓坂舞という女は、普段は自信満々で経験豊富そうな態度を取っているが、実は超純情お嬢様だ。
どっちにしろ、目の前にある『たわわなIカップ』に触れることはできない。
実現しない希望なら目の前に現れないでほしいよ。
楓坂は三脚にセットしていたビデオカメラを手に取り、スイッチをオフにした。
「でも、これで収録はできたし、今日はこのやりとりを投稿しましょ。サムネのタイトルは『二十七歳男は胸を触るか!?』で決まりかしら」
「二十六だ」
「しつこいわよ」
「おまえがな」
俺達がこんなやり取りをしていたのには理由がある。
それはさっきのやり取りを動画編集し、YouTubeに投稿するためだ。
YouTubeにはいろんなジャンルがあるが、定番の人気コンテンツに、恋人が一緒にさまざまな企画を行う『カップルYouTuber』というものがある。
恋人と一緒に行うという点以外は、はっきり言ってなにをやってもいい。
ゲーム実況でもいいし、料理でもいい。
さっきみたいに胸を触るかどうかという意味不明の企画でもいい。
しかし……これがなかなかキツイ。
想像を絶するストレスだ。
YouTubeで他のカップルをよく見るが、よくやってられるよな。感心するよ。
「まさか俺がカップルYouTuberになるなんて……。世も末だな」
すると楓坂はくるりと俺の方を向いた。
「笹宮さん。言っておきたいことがあるのだけどいいかしら?」
「ああ、俺もだ」
彼女は女神スマイルをしてみせる。
「私……、あなたのことが大っ嫌い」
「ああ、知ってるよ。実は俺も楓坂の事が嫌いなんだ」
「うふふ。私達、すごくすごく相性がいいわね。敵として……」
「そうだな。運命を感じてるよ。敵として……」
そう……、俺達は仲が悪い。
お互いに敵だと認識している。
なのになぜ、カップルYouTuberの真似事をしているのか……。
その理由は、三日前に遡る。
■――あとがき――■
数多くある作品の中から本作品を選んでいただき、誠にありがとうございます。
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次回、三日前にあった出来事とは!?
投稿は1日2回。朝・夜7時15分頃です。
よろしくお願いします。(*’ワ’*)
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