ドライブに行く前の朝食


 駅ビルでの買い物を終えた翌日。

 朝早く目が覚めた俺は、朝食の準備をしていた。


 すると目を覚ました楓坂が起きてくる。


「笹宮さん、おはようございます」

「おはよう。楓坂」


 パジャマ姿の楓坂は、眠い目をこすりながらキッチンに立つ。

 そしてエプロンをつけて、料理の手伝いを始めた。


 料理が苦手な楓坂だが、手伝いをする中で少しずつ慣れ始めている。

 まだ包丁を持たせるのは危なっかしいが、その成長は確かだ。


「昨日はちゃんと眠ることはできたか?」

「はい。……あのぉ、昨日はすみませんでした」

「なに言ってんだ。そんなこと気にするなよ」


 昨日俺達はお互いの気持ちを知ることができた。

 だが恥ずかしがり屋の楓坂には、まだ普通の恋人のようなやり取りをするほどの余裕はなく、ちょっとしたことでのぼせてしまう。


 昨日は腰が抜けて、そのまま寝てしまったくらいだ。 

 まぁ、でも。それが楓坂らしくていいのかもしれない。


「今朝食の準備をしているから、ちょっと待っていてくれ」

「それじゃあ、今のうちに動画をアップしておきますね」

「ああ」


 いちおう俺達はカップルYouTuberとして活動をしている。

 ストーカー対策として始めたことではあるが、純粋に動画配信そのものを楽しんでいた。


 一度時間帯がズレてしまったことをきっかけに、配信時間は不定期ということにした。


 そうしないと、準備が間に合わないのだ。


 しばらくして、俺達は朝食を食べ始める。

 今日のメニューは目玉焼きにウインナー、そしてトースト。

 オーソドックスな朝食メニューだ。


 朝食を食べながら、俺達は動画配信について雑談をしていた。


「初回ほどじゃないが、順調にチャンネル登録者数が増えているな」

「ええ。今月の収益が楽しみ。うふふ」

「お嬢様なのに、そういうところはちゃっかりしているよな」


 俺はコーヒーを飲む。


「でも、もう偽物じゃなくて、本当のカップルなんだ。堂々と配信できるのは気が楽だ」

「私達、付き合ってるんですね」

「ああ」


 すると楓坂は俺の方を見て、しばらくぼーっとしていた。

 目が合うと、慌てて下を見る。


 はっはぁ~ん。さては照れているな。


 こうして付き合い始めたからこそわかるが、楓坂の初々しいところは率直に言って可愛い。

 見ているだけでも、楽しいと思う。


 いっぽう楓坂は俺に見つめられて、照れながらコーヒーを飲もうとした。

 だが……。


「あつっ!」


 落ち着かない状態で飲もうとして、うっかり熱さを確認せずに飲んでしまったらしい。


「ははっ、なにやってんだよ」

「んむぅ~」

「そうふくれんなよ。大丈夫か?」

「はい。火傷というほどではないので」


 こういうやりとりの一つ一つが愛おしいと思う。

 朝食だけでこんなに幸せな気分になれるのだ。

 今日のドライブはどんなことになるのだろうか。


 こうして俺達は支度を整え、マンションを出る。


 そして近くに駐車場まで移動して、自家用車のSUVに乗り込んだ。


「笹宮さんって、意外と車を綺麗にしていますよね」

「意外ってなんだよ。部屋だって綺麗にしてるだろ?」

「貴方の場合、何もないっていうのが適切じゃないかしら」

「そうか?」

「今度、家具も買いに行きましょう。これからも一緒に住んでいくんですから」

「そうだな」


 鍵を回して、エンジンをかける。


「じゃあ、行くか」

「はい」


 目的地は日帰りで行ける滝。

 さぁて、のんびりと楽しむか。



■――あとがき――■

いつも読んで頂き、ありがとうございます。

☆評価・♡応援、とても励みになっています。


次回、ドライブデート


投稿は【朝7時15分頃】

よろしくお願いします。(*’ワ’*)

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