坂水

物語に魂があるか論は、創作界隈に投げ込んだなら村が三、四つが燃えかねないほどの危ういテーマである。 まあ、今作にはすでにたくさんのレビューがあり、概要や面白さはそちらを読めばばっち…続きを読む

個人的な良い物語の基準に「物語から風を感じられるか」を挙げている。 もちろん、光だったり、色だったり、音楽だったり、別物でも良い。 ともかく、読み始めたら、ここではないどこかへ連れ…続きを読む

いつもと違う帰り道で素敵なカフェを見つけた時、古本屋でずっと探していた本に出会った時、森の奥できらきら光る石を拾った時。 そんなときめく、心躍る、これから何か素敵なことが起きるので…続きを読む

今お読みの、あるいは執筆中の物語についてお尋ねしたい（特にファンタジー）。 その物語に風は吹いているか、と。 主人公は赤き砂竜使いナージファの養女となった十六皇女。彼女が氏族の中…続きを読む

人は平等ではなく、生きづらさは確かに存在する。 安定した環境に身を置くのにコストがかかるということだ。それはお金だけでなく、時間や手間や精神的疲労、そういった諸々の負担について。 …続きを読む

竜により人の国が滅ぼされ、世は竜に支配されていた。圧倒的な強さを持つ竜に、しかし人は叛旗を翻す。この物語の主人公夏山星舟は、竜へ叛旗を翻した人の宰相――ではない。彼は人でありなが…続きを読む

図書館へ行くとよく児童書フロアにも立ち寄ります。寺村輝夫、安房直子、赤木かん子のアンソロジー。懐かしい本を読みふけってしばし、中高生を対象とした今の時代にフォーカスした本も平置きに…続きを読む

咳はそもそも一人でするもの、キスはそもそも二人でするもの。当該行為を〝しても〟一人になるのだったら、どちらがよりものがなしいか。そんなことをふと思う。 〝キスをしても一人〟――相手…続きを読む

恋は、遠い日の花火ではない――言わずと知れたサントリー・オールドの名コピーである。昔、これに憧れ、いつか情熱大陸に出るんだと豪語していた広告屋の同僚がいた。尻で踏むハヅキルーペのC…続きを読む

夫以外の男との恋愛。言ってしまえば不倫であり、しかも物語の核となっているのは、夫と恋人を持つ専業主婦と独身男（NOT恋人）。 ヒロインは不貞行為に関しては後ろめたさを感じず、懊悩も…続きを読む

カクヨム登録者二十五歳以上の六割を殺す物語ではないでしょうか。創作にもがく人々の話はあまりに自らを投射するので避ける傾向だったのですが、〝彼女〟が出てくるのならば読まねばならない。…続きを読む

『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』は故米原万里氏のノンフィクション。かの名著を本歌取した今作、一体どんな物語なのと読み進めたのですが、なんとまあ、アーニャの生き生きしていることか。そ…続きを読む

今作のおかげで、一食分、考える手間が省けました。 というか白状すれば作らずにはいられず、他に選択肢はなかったのです。 しかし神聖な儀式めいた調理であるはずなのに、最終的に大工仕事っ…続きを読む

美大の食堂『プラタナス』を訪れる学生とメニューの群像劇（？）。どれもこれも大変美味しそうで風情があります。 特徴的なのが、『プラタナス』側の人間はまったく出てこず、料理を供しながら…続きを読む

炊飯器を回り、巡り、引き合う友人以上恋人の関係。さしずめ太陽系ならぬ炊飯器系恋愛でしょうか。 さて、再び巡り合うであろう二人の未来は……？　人事を尽くして炊飯を待つ、それはきっと蓋…続きを読む

なぜ彼女は生涯をまっとうするのか。 読了してそんなことを考えました。恋しい人が死んだなら後を追いそうなものだけれど、彼女は抜け殻のようになっても生き抜いた。もう少しだけ待っていてと…続きを読む

幼馴染がすいかになるという。主人公と一緒の高校に通うという未来を投げ捨てて。 一読者である私は主人公と同じく幼馴染に翻弄されました。放っておけばいい、自分には自分の生活がある、わ…続きを読む

キッチンドランカーのアラサーOLとお隣の新人社会人。料理って作っている時が一番美味しく、アルコールが欲しくなる気持ちはものすごおくよくわかります（切実）。 次は何を作るのだろう、二…続きを読む

誰かに嫁いで子を生み、満ち足りた生活を送っていたなら彼女は生涯幸福な姫君であったかもしれない。けれど、運命はそれを許さず、彼女を女王に選んだ。そして一地方領主であった彼もまた、真の…続きを読む

短編ながら往年の某長編SF小説のような読後感。 待っているだけでなく、自分の足で駆けていくヒロインがとても好ましいです。ラストの機会音声アナウンスがこの世界にぐっと奥行きを与えてい…続きを読む

苦味さえも甘く。傷すら思い出に。サバサバだって可愛く。 そんな魔法を使えるのは、恋した相手ただ一人。 くるぞくるぞくるぞ、きたー！と、にやにやしながら読んでしまいました。なので電車…続きを読む

非常に歪な関係である。幼馴染兄妹二組。凡百の話ならば、一組ずつ成立させてめでたしめでたしのはずなのに。秘めたる矢印は頑なに想い人を指し続ける。 主人公は、かつての幼馴染にもっともで…続きを読む

桜が嫌いというのは本心なのか、あるいは一層好ましいからこそ嫌いと語らせたのか。 かつての鋭さ瑞々しさを失った男と、実直に今を生きる女。 根を張った想いを断ち切るのは、ひどく痛ましい…続きを読む

蝉の鳴き声、川に飛び込む水音、郡上踊りの唄。遠く離れたはずの故郷が、けれど瞼を閉じるとやたらと近く生々しい。 「次は、いつ来るんや」 それは地元の旧友からの友情の誘い文句であるはず…続きを読む

激しい恋情を砂漠に喩えて心中を語らせる手腕がお見事でした。可愛く無邪気な彼女のおねだりと対比させることでさらに浮き上がる暗く重い想い。ふと、谷川俊太郎氏の「嫉妬」という詩を思い出し…続きを読む

今作、拝読して好きな某二人組のコントを思い出しました。合間合間に挟んだ言葉の解説と、言葉を踏襲した展開、そして物語に漂う切ない雰囲気が思い起こさせたのでしょう。 小品であるにも関わ…続きを読む

現代に現れた奇病、地獄での邂逅、過去の苦難、そして再び結ばれる縁。なんと豊かで広がりを持った物語だと驚嘆し、一体どこへ連れて行かれるのかと心が躍りました。 物語に深みが増すのが第1…続きを読む

楽園（パラダイス)の語源は、〝塀で囲まれた〟の意である、と某漫画で読んだことがあります。 息苦しい雨は、同時に彼女にとっての盾であり救いであった。もっとも彼女はそれに気付かず、気付…続きを読む

世界的に有名なミュージシャンの死が問い掛ける。人一人の命が地球より重いなんていうのは寝言であり、それぞれ違う。親兄弟、子ども、恋人、為政者、宗教家、芸術家。果たして誰の命が最も重い…続きを読む

端的に言って、傑作だと思いました。感染病を軸として描かれた未来の地球の（約）百年史。 深い洞察、緻密な構成、超越した俯瞰力。それにしても作者の幅広く深い知識には驚かされました。政治…続きを読む

一話完結、一万文字前後のリーダビリティの高いコージー（？）ミステリ。 潮風薫る湘南のカフェに集う面々が謎を解きほぐします。いや、ほぐすのはペット探偵のみ、周囲は茶々を入れてるだけ……続きを読む

季節をとびこえた夜だから、伝えても良いかと思わせたのか。なんとはなしに、気持ちが切り替わる夜というのはあるものです。
少しだけ満ちた二人の関係を羨ましく感じました。いいなあ。

当方クトゥルフ神話についての知識がまったくなく、それおいしいの、やわらかいの状態で、申し訳なさと？マークを引き連れながら読み進めましたが、確かな筆力が物語を牽引し、大変豊かな時間を…続きを読む

性癖は千差万別。こういう妄想というか願望というか、飢餓感はよくわかります。さすがに行動にうつしてはないけど。いや、本当に。ある種のノスタルジックを感じさせました。 このようなもやも…続きを読む

刻々と変わる人と人との関係性、心持ち。「鬼隠し」という怪奇現象さえも飲み込む、人の心の移ろいにひやりとさせられました。

ジャンルという仕切りは検索には便利だけれど、時に無粋となるもの。面白ければ良いじゃない、と思うわけですが。しかし、ミステリーの河を下っていたはずなのに、一体いつのまにこんな混沌とし…続きを読む

〝あれ〟を『真田幸村』とするそのセンスにまずもって感服いたしました。 私は『真田幸村』がいないことに劣等感を持っていた。その気持ちは家の匂いのように染み付いていて大人になっても振…続きを読む

時は大航海大時代、主人公はカリブ海の植民地にやってきたスペイン人。といっても、大航海時代は十五世紀から十七世紀まで幅がある。授業で一言でくくられた『大航海時代』には、当然ながら人…続きを読む

深い医療への知識に根付いた上質なヒューマンドラマ。 圧倒的なリーダビリティで、長編ではありますが楽しんで読了できました。情熱と真摯さが筆致に表れており、とても好ましかったです。登…続きを読む

セカンドムーン出現以後、太陽に去られ、吸血鬼に蹂躙される人類。 初っ端からヒロインが窮地につぐ窮地で、けれど凛々しく雄雄しく立ち向う様は惚れ惚れします。 そして現われたるやヒーロー…続きを読む

作者は業界の方でしょうか。現場の人間の描写が生々しく、読んでいて胃が痛みます。
今後、何が浮かび上がってくるのか、作者の企みに期待しています。

たった今、読了。 因果なのか、偶然なのか。 伏線というべきか、羅列というべきか。 調和なのか、でたらめなのか。 ただ言えるのはおそろしく熱量を持った物語だったということ。 面白かっ…続きを読む

サクラビルに住む、元々は何の繋がりもない人たちの物語。 安易な「良い話」ではなく、じりじりと複雑な人間関係を編み上げていく様に現在更新分まで一気に読みました。 先生と朋子さんと村石…続きを読む