ラストの着地がお見事!料理のくだりは悲しいはずなのに、とても緻密でお腹がすいちゃいました。静かだけど濃密な世界を見事に書かれています。
誰かに嫁いで子を生み、満ち足りた生活を送っていたなら彼女は生涯幸福な姫君であったかもしれない。けれど、運命はそれを許さず、彼女を女王に選んだ。そして一地方領主であった彼もまた、真の忠臣となった。最後の一文が、痺れるほどに良いです。
静謐な空気のなかに張り詰める死の雰囲気が、逆に二人の生きざまの対比を浮かび上がらせます。今から死ぬために、生きる行為である食事を楽しむ。そのもの悲しさが料理のおいしそうな描写によって引き立てられ、美しい物語になっています。スティーグがこのあとどのように王女を手にかけるのか、イルヴァはどのように最期を迎えるのか。語られぬ物語の結末が美しく見える気がします。