概要
奇妙なのは住人の誰もが懐中時計を持っていること。これほど小さい時計はまだ発明されていない。さらに謎なのは、フアンが持つと動き、持ち主に返すと止まることだ。
島のことを知ろうとするフアンに、「島から出ていけ」と迫る人物が現れる。この男こそ、この島に住む天才時計師。およそ200年におよぶ孤独と、島の秘密を抱える人物だった。
クリストバル・コロン(クリストファー・コロンブス)から始まった悲劇、インディオの少女が見てきたこと、世界のどこにもない時計、不意に現れては消える謎の子供、父の足跡と母の行方。
すべての真実に触れたとき、フアンはなぜ自分がこの島に来たのかを理解する。
※残酷な描写があります。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!こんな境遇に陥るのは嫌だな。
10年ちょっと前だったか、アメリカの「ロスト」と言うドラマが日本で流行った。飛行機が事故を起こし、乗客は孤島に投げ出される。でも、その孤島には秘密が隠されていて…と、シーズン5か6まで続いた人気番組だった。レンタルビデオ屋の棚を占領したもんだ。
本作品は、そのドラマと雰囲気が似ている。
似ているのは雰囲気だけで、世界観も訴える内容も全く違う。ロストが竜頭蛇尾だっただけに、最後までレベルを落とさなかった本作品には賛辞の拍手を贈りたい。
その本作品だが、数をこなした読者なら、序盤から中盤に移り始めた段階で、「どうなるの?」との疑問は抱きつつ、ある程度は展開を予測できるだろう。
でも、眼目は其…続きを読む - ★★★ Excellent!!!時と歴史と人の思いと。カタルシスを求めるなら!
大航海時代のインディオにまつわる物語――いったいどんなお話なんだろう――と読み始め、冒頭で描かれる木製の懐中時計の重厚な存在感に触れてしまったが最後、一気読みしました。
異邦人のフアンの目で語られる「Ⅰ フアン・アレナスの章」では紀行文や冒険物語のようなドキドキに、「Ⅱ フェルナンド・ヒロンの章」ではファンタジーのワクワクに夢中になって、時間を忘れて没頭しました。
このドキドキとワクワクを、これからお読みになるすべての方に味わってほしいから、これ以上は書きたくない!
そんなふうに、内容を語るのを憚ってしまうほど、驚きの結末と、そこに至るまでの過程を余すことなく楽しめるミステリーでもありま…続きを読む - ★★★ Excellent!!!進まない時計と共に、同じ一年を生きている。百回も、二百回も。
クリストバル・コロンがインディアスに到達したこと、
つまり、コロンブスによる新大陸発見が世に知られ、
スペイン人たちがこぞって中南米に入植を始めたのが、
16世紀にならんとするころだった。
以後200年、海の強国であり続けたスペインが、
つい先ごろ、イギリスの艦隊によって撃破された。
新米船乗りの青年フアンが2度目の航海に出たのは、
そんな時勢の18世紀初頭のことだ。
嵐に見舞われ、船から投げ出されたフアンは、
導かれるように、カンティガという未知の島に流れ着く。
20年前に父が立ち寄り、母と出会い、
不思議なまでに精巧な、動かない懐中時計を手に入れた島だ。
きちんと動く懐中時計など、…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ブラボー、フェルナンド・ヒロン!
時は大航海大時代、主人公はカリブ海の植民地にやってきたスペイン人。といっても、大航海時代は十五世紀から十七世紀まで幅がある。授業で一言でくくられた『大航海時代』には、当然ながら人が生きて死に、勝者と敗者、支配者と被支配者、そして光と闇があった。本作はその時代に生きた人のほんの一握りを丁寧に深くそして大胆に描き上げている。とまあ、にわか知識はさておき、なにをおいてもブラボー、と叫びたい。
天才時計職人フェルナンド・ヒロンは影の主人公でも言うべきか。彼の身上を知るとたまらない。本当にたまらない。あの境遇に陥ったのはおそらく彼自身が原因なのだろうけど、それでもたまらない。読み進めて事実が証され…続きを読む