ブラボー、フェルナンド・ヒロン!


時は大航海大時代、主人公はカリブ海の植民地にやってきたスペイン人。といっても、大航海時代は十五世紀から十七世紀まで幅がある。授業で一言でくくられた『大航海時代』には、当然ながら人が生きて死に、勝者と敗者、支配者と被支配者、そして光と闇があった。本作はその時代に生きた人のほんの一握りを丁寧に深くそして大胆に描き上げている。とまあ、にわか知識はさておき、なにをおいてもブラボー、と叫びたい。

天才時計職人フェルナンド・ヒロンは影の主人公でも言うべきか。彼の身上を知るとたまらない。本当にたまらない。あの境遇に陥ったのはおそらく彼自身が原因なのだろうけど、それでもたまらない。読み進めて事実が証され、ビエウの彼に対する意図にふれると胸を突かれる。
そして真っ暗な舞台の上、一条のスポットを浴びて、哀しくも明るいであろうフェルナンドの表情がありありと浮かぶのだ。(そうなぜか御作、私の脳内では映画のような映像ではなく、舞台で再生されました)。
短くはないし、とっつきやすいとは言い難い(リーダビリティはすこぶる高い)。けれどぜひ読んでほしい。本当にⅣ章(特にⅣ−2)まで読んで!
フェルナンドに万感の拍手を、作者に花束を送りたい気持ちです。

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