概要
零細出版社でアルバイトをしている大学生の米田は雑務やHPの更新の他に実話怪談の記事の執筆を担当していた。ある日、米田は取材の最中に佐倉乃亜という不思議な女性と出会うことになる。
彼女はオカルトマニアで実際に怪談の現場に足を運び、科学的に証明できるのかどうかや、再現性がある事象なのかどうかを確かめているのだった。
そして乃亜は怪談の中でも特に「神隠し」について異常なまでに執着しており、自らもいつか異界へと行くことを夢見ていた。かかわり合いになりたくない米田だったが、乃亜につきまとわれる内に、二人して深夜のオカルトスポット巡りというまっとうではないデートを通じて否応なく距離を縮めていくのだが――。
※書籍版とは収録エピソードが異なりますので
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!そのホラーからは、視線を感じる
個人的な良い物語の基準に「物語から風を感じられるか」を挙げている。
もちろん、光だったり、色だったり、音楽だったり、別物でも良い。
ともかく、読み始めたら、ここではないどこかへ連れて行かれる感覚。遠くへ、遠くへ、遠くへ──なれど今作は現代もののホラー、遠くに連れて行かれる感覚というのは得にくい、と思っていた時がありました、私にも。
結果、見事に連れて行かれてしまった。
出版社でアルバイト中の学生ライターを主人公に物語は進む。怪異の相談者である後輩、怪異をさぐる過程で出逢った女性、その女性と後輩と後輩の彼女とのひと夏ホラー……だったはずなのに。
読了し、主人公を思う。
時に、主人公の感覚が…続きを読む - ★★★ Excellent!!!面白い! 切ないホラー小説でした。
とにかく「面白かった」と伝えたい。
ストレートに「面白い」と表現するしかない作品でした。
ホラー小説自体は読むジャンルとして得意な方ではありませんが、まずそれを忘れさせるくらいに読みやすい。文章のテンポ自体が非常に良いのです。正直星3個じゃ足りないくらい。圧倒的没入感。
グロやゴアな表現で恐怖を煽るわけではなく、得体の知れない存在・怪異を取材する形で物語が進行していきます。
まぁ確かにこういう状況なら怖くもなるな、と共感していたら本物の怪奇現象にも直面して……そして、な内容。
中盤からゾクゾクと恐怖が増しながらも、切なく感じるラスト。
タイトル回収も秀逸で、とてもストンと腑に落ちる展開…続きを読む - ★★★ Excellent!!!一陣の風のようなホラー(シュールな笑いもある)
読みやすくてシュールで面白い文体に惹き込まれてすっすっと読み進めていくうちに、独特の切なさにやられました。
キャラクターが立っていて、森博嗣作品に匹敵するようなやりとりの面白さがあります。
ホラーなんですが、多くの作品とは違い、恐ろしさが絹に包まれているかのように上品ですね。
驚かされるというよりも、不思議さを提示されて鳥肌が立たされました。
夜道を歩いていると、いっそう冷たい一陣の風に撫でられたような心地のする小説です。
その風の冷たさをずっと捉えておきたいけれど、そういうこともいかない。
侘びしいです。
作品を読み終えた時、次回作や番外編や続編を欲してしまうことが多いのですが、この作…続きを読む