ラストで深くしみ入る、タイトルに込められた想い

大学生でありながら怪談ライターとしてアルバイトする米田が、様々な出会いを通じて様々な怪異を解決していく物語。

解決といっても彼には霊感があるわけではなく、またひょんな事から現場検証のパートナーとして付いてくるようになった乃亜も然り。本作のヒロインとなる彼女は神隠しなる現象にとても興味を抱いており、しかしそれには深い事情がある模様。

こんなことだったのかと安心したり、こんなことが起きていたのかと震えたり、こんなことになるなんてと泣きそうになったり――怪異に遭遇する度、多彩な感情に揺さぶられますが、怪異の根底には必ず『人の強い想い』があります。
これまでどこか諦観しがちで感情が希薄だった米田も、乃亜と共に過ごす内に大きな想いを自身の中にも宿らせ始め、少しずつ変わっていくのがわかります。

わかるだけに、彼の想いが痛く迫る……!

多くの方は、このタイトルから不穏な気配を想像するでしょう。
それが徐々に晴れていき、ラストで改めてタイトルを噛み締める時に広がる切なさといったらもう……私の稚拙な語彙では、表現することができません!!

番外編では、密かに決意を秘めていた乃亜とその後の米田を知ることができます。
特に後者のエピソードでは、少しだけ成長した後輩の山城に胸打たれ、また想いを胸に尚進もうとする米田の姿に胸が熱くなりました。

ジャンルはホラーだけれども、怖いだけじゃない。
寂しくて切ない、悲しくて痛い、それでも人は誰かを愛さずにはいられない、そんな想いを味わうことができる作品です。

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