概要
ある日、司城のもとに中学生の少年、椎羅が訪ねてくる。
「6年前の事件を〝視た〟んです」
彼は司城の妻を殺す光景を犯人の目を通して視ていた。
そんな不思議な少年とともに、事件の関係者に接触する司城だが不運にも悲惨な死を遂げる──
それから4年半後、娘の絵莉が椎羅のもとを訪ねるも、彼は山奥に引きこもっていた。
椎羅は言う。
「この件からは手を引いたほうがいい。およそ人の力でどうにかなるレベルの話じゃない」と。
戦慄の殺人衝動。禁断の因習。消滅した郷里から始まった恐怖の連鎖。
古より隠されてきた化物が解き放たれ、惨劇はさらに蔓延する。そして残酷な真実が明らかに。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!不要なのだ、体も命も、記憶も、自分さえも――神の器には。
たった今、読み終えたところなのですが、この思いをどう伝えたらいいものか……!
ジャンルはホラー。
間違いなく面白く、間違いなく恐ろしく、間違いなく心に刻まれ――むしろ、切り刻まれ喰まれるような心地すらします。
謎の殺人事件及び怪死事件に共通する、とある臓器提供者。
その臓器提供者を調べる内に明らかとなる、とある島の存在。
今はなき島に脈々と受け継がれていた、とある神にまつわる悍ましき因習。
真実が徐々に明らかになるにつれ、自分の内部まで侵食されていくような感覚に見舞われました。
個人的な意見ではありますが、最も恐ろしいのは『自分を失うこと』ではないかと私は思います。
愛する者を失う…続きを読む - ★★★ Excellent!!!血の意味
物を買うにはお金が必要なように。
人を育てるには時間が必要なように。
願いや奇跡を求めるならば必ずや代償が付きまとう。
楽して助かる命はないように、タダで叶えられる願いなどない。
贄というのはもっとも効率的で最適な支払いという代償である。
後払いか、先払いか、望んでなかったかは別として……
この作品の恐ろしいところは、読み進めていくうちにジワジワと、そう例えるなら逃げ場のない密室に足元から水が溜まっていくような恐怖が文体から醸し出されている点である。
何気ない発言、自然な行動が、狂気と恐怖にリンクしているのだから恐ろしい。
かといって謎の解が各話ごとに積み上げられていく形で引き込んでくるから…続きを読む - ★★★ Excellent!!!狂っているのは誰だ——?
ある探偵事務所に、一人の探偵がいた。そこに、殺人者と視界を共有することが出来る少年が転がり込んできた。その少年は、移植手術を受けた角膜のドナーだった。そして少年は、いつか自分も殺人者になることに怯えていた。実際、角膜移植を受けてから、殺人衝動があったらしい。探偵と少年は、レシピエントからドナーにその性格や性質、衝動などが移転する症例から、他のドナーにもあたりをつけてみる。ところがその同じレシピエントから移植を受けたドナーたちは皆……。
そして四年半が過ぎ、探偵の娘が少年を訪ねてくる。死んだ父の遺品を取り戻し、父の悲惨な死の謎を解くためだ。少年もこれに協力し、レシピエントの出生や少年の親族…続きを読む - ★★★ Excellent!!!記憶を喰うか、肉体を喰われるか。人の遺志を辿った先の、恐ろしき神の意思
最初から最後まで夢中で読み耽りました。
移植手術を受けた人間が、知らない記憶によって殺人衝動に目覚め、人智を越えた力で凄絶な死を遂げる。
何が起きているのか、何に襲われているのか、息をもつかせぬ展開に、読む手が止まりませんでした。
メインの二人、椎羅と絵莉が非常に魅力的です。
事件に巻き込まれて死んだ父親の追っていた謎を引き継いだ絵莉と。
彼の死に際の言葉に従い、絵莉を危険から遠ざけようとする椎羅。
行動派で世間ずれした感じの絵莉も、ドライでコミュニケーションが下手な椎羅も、抱える闇の深いこと。
一人の男の遺志によって繋がった二人の距離感が、ものすごく好みでした。
移植者たちの視界を共…続きを読む