血の意味

物を買うにはお金が必要なように。
人を育てるには時間が必要なように。
願いや奇跡を求めるならば必ずや代償が付きまとう。
楽して助かる命はないように、タダで叶えられる願いなどない。
贄というのはもっとも効率的で最適な支払いという代償である。
後払いか、先払いか、望んでなかったかは別として……
この作品の恐ろしいところは、読み進めていくうちにジワジワと、そう例えるなら逃げ場のない密室に足元から水が溜まっていくような恐怖が文体から醸し出されている点である。
何気ない発言、自然な行動が、狂気と恐怖にリンクしているのだから恐ろしい。
かといって謎の解が各話ごとに積み上げられていく形で引き込んでくるから、恐怖があろうと読み進めてしまうまでの引力がある。
そして何よりも最後が恐ろしい。
そうだ、臓器とて器、流れるものこそ力。
器はただ流れるものの力を受けて動いているだけに過ぎない。
誰が言ったか、いのち、ちから、は血の<ち>が含まれていると。
血こそ根源であると。

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