みんなこわい話が大すき

作者 尾八原ジュージ

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★★★ Excellent!!!

 こわい話はきらい。でも、おばけは怖くない。なぜならこわくないおばけを知っているから。

 小学校四年生のひかりの生活はもう惨憺たるものです。けれどもう達観というか諦念してしまっているのか、彼女が世の中を見つめる目はとても淡々としています。
 彼女が唯一安らげる押入れの奥にいる「ナイナイ」。どう考えてもヤバそうなそれを、いじめっ子だったありさが見にひかりの家にやってきたことから物語は大きく動き出します。

 作中で起きている事件は結構悲惨なのですが、登場人物たちがみんな飄々としているので、読んでいるこちらとしては何だか「こわくないおばけ」を見ているような気がしてしまいます。

 人の執着心や悪意、怨念じみたものが渦巻いているけれど、それがオブラートに包まれているように……見えているのに少し遠い。直視するとゾッとするけれど、先が気になって薄目で見てしまう。

 そんな、こわいけどこわくない、でもやっぱりちょっとこわいお話でした。

 あ、あとこれだけは言いたいんですが、一見人畜無害そうな神谷さんのぶっとんだ脅し方が最高でした!

★★★ Excellent!!!

 見切り発車と言っているのでプロットなしで書いてるんですよね……毎日投稿で10万文字以上の作品書ききるなんて凄すぎる。
 作者様は短編の数もすごいんですが、本作も含め全てセンス抜群です。国語力が高くて文章の「てにをは」がしっかりしてるので、とにかく読みやすい。ちゃんと怖くて、表現や構成のセンスも良くて、しかも読みやすい。このまま書籍化できちゃうよねと思ってしまう。挿絵は……ラノベっぽい奴じゃなくて真鍋博(星新一の作品の挿絵書いてた人)みたいなのが似合うと思う……なんて、そこまで妄想してしまいました。
 本作を読んでて星新一の長編「夢魔の標的」を思い出しました。内容に共通点があるんじゃなくて、文章を読んでいる途中でハッと後ろを振り向いちゃうんですよね。なんか居るわけでもないのに。読者にリアルに警戒行動を取らせてしまうほど、本作の不気味さは刺さります。公式さんがレビューつけてるぐらいなのですでに注目されてるのかもしれませんが、本当におすすめの作品です!

★★★ Excellent!!!

小学生のひかりは、転校先で「こわい話、すき?」というクラスの人気者の問いに「きらい」と答えたばっかりにいじめられるように。家では情緒不安定な母親に怒鳴られてばかりで、彼女の安らぎは自室の押し入れの中だけ。そこには彼女にしか存在を感じ取れない「ナイナイ」がいた……。

冒頭から学校でのいじめ、小学生視点ながらも巧みな文章の効果もあって非常に陰鬱な気持ちにさせられるのだが、このいじめはある出来事をきっかけにいじめはピタリと収まる。さらにお母さんの性格も落ち着き始め、ひかりの日常に平穏が戻ってくる。これでめでたしめでたし……と終わればいいのだが、本作はこの変化の様子が非常に薄気味悪いのである。

そして本作は視点人物が次々変わっていくのが大きな特徴。ひかりとナイナイの話がメインで進むのかと思いきや、物語は盲目の霊能力者とそのボディガードの青年にスポットが当たり、さらに彼らに相談を持ち込んだ女性の話へと移り変わる。一見接点のなさそうなこれらのエピソードがやがて一つの線となって繋がっていく様子はミステリー要素もあって面白い。

扱っている題材が題材だけに万人にオススメはしないけれど、こわい話が大すきな方々には是非読んでもらいたい作品だ。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)

★★★ Excellent!!!


 まず第一にとても読みやすいです。
 第一章『こわい話なんかきらい』は、子供めいた平易でひらがなの多い文体で書かれているのですが、普通ひらがな漢字のバランスが傾けば読みにくくなるはずなのに、文字の“比率”を変えても“均整”が崩れることはない。
 いっそ希薄なくらいにスムーズに読める文章なのですが、それが学校という閉鎖された社会で膨らむ悪意や、一見善良なようでいて確実にひたひたと迫ってくる恐ろしさを見る「ひかりちゃん」の視界なのだと思うと、何とも言えない気持ちに襲われます。言い換えれば、不思議な、ひんやりと涼しい、それでいて心地よい香気があるということです。
 さてそこから『「よみご」のシロさん』へと繋がっていくわけですが、この転換も、前章を読んで「いったいどうなるんだろう」とわくわくしている読者にとっては1cmの段差にもなりません。却って彩り鮮やかに感じるくらいです。
 こちらの文章も、やはり丁寧で読みやすいことに変わりはなく、穏やかな語り口が世界観とシナジーを生み出しています。

 また、中身も非常に魅力的だと言えるでしょう。
 何がどう繋がっているのか、それを明らかにする仕方がとても見事ですし、まるで現実と地続きのように思えるリアリスティックな世界観に潜む■■■■、そして人間の持つ悍ましさが素敵に溶け合って、読者を惹き付けます。
 ぜひあなたもどうぞ。

★★★ Excellent!!!

 いやはやなによりくすぐり方がとにかく上手い。
 見事なのは提示される情報量と距離感の塩梅ですよ。まさに作者の掌の上で良い様にビビらされている自信があります。

 都合の良すぎる奇怪な出来事や過去の出来事として、ひたりひたりと恐怖がにじり寄ってくる。
 視点が何度も変わります。
 事態の只中にいる何も分からない子供の視点。
 恐ろしい何かが起きていることだけは察し踏み込んでいく大人の視点。
 恐ろしさを理解し距離を保つ専門家側の視点。
 忍び寄る恐怖が寸止めを繰り返しながら視点が変わるたび、物語は大きく緩急をつけて一息入れさせてくる。
 けれど視点人物が見聞きした全てを知る読者にだけは、背筋に冷たい何かが尾を引き積み重なっていく。

 得体の知れない何かに翻弄される登場人物に、生半に情報を持つこっちはこうしろああしろ、今すぐ逃げろと指図したくなる。けれど恐怖の本当の姿は我々も知らない。
 送り狼のように、恐怖が付かず離れず、けれど決して逃がしはしないという意思を持って迫ってくる。
 視点人物の点と点が繋がり収束するのにつれて、恐怖も距離を詰め、こちらを仕留めようと包囲を狭めてくる。
 続きの気になる作品です。