だれかが見ている、そこにいる。「こわい話、すき?」

 読みやすい小学生視点の語り口や、淡々としている文章がじわじわと想像力を掻き立ててくる絶妙なホラー作品。読んでみた感想はまず「これはすごい!!」の一言。

 主人公のひかりは、転校初日にクラスのアイドル的存在の「ありさちゃん」に「こわい話、すき?」と聞かれ、きらいと答えたことから新しくて楽しいはずの学校生活が様変わりしてしまう。
 家に帰ってもひかりの心安らげる場所はあまりなく、押入れの中にいる「ナイナイ」が心の拠り所のような存在に。

 だけどそんな日常は、ありさちゃんがひかりの家に「ナイナイ」を見に来た日から一変していく——。

 純粋無垢な「悪意」や「怖さ」、そして人の醜さや恐ろしさが幾重にも重なって、真相に辿り着くとゾッとすること間違いなし。
 そこにはどこかやるせなくて、悍ましい真実が隠されているのだけど、登場人物たちのどこか明るい性格や達観した感覚、そして純粋さがドロドロとして見せないところもこの物語のすごいところ。

 章が変わる度に視点が変化するのも見所で、「どういうことだろう?」という部分が後半になるにつれ交差して、綺麗にまとまっていくところもお見事。

 ノープロットでこの完成度、まさに著者の筆力がなせる技でしょう。
 ラストがここに繋がるかー! というのも最高でした。

 ねぇ、あなたはこわい話、すき——?

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