ある雪の降るクリスマスの夜。
街の明るい笑い声とは裏腹に、路地裏ではひっそりと一人の身寄りのない男の命の灯火が……今まさに消えようとしていた。
自分の人生など、なんの意味があるのだろう。
そう凍える中で眠りに落ちていきそうな男が出逢ったのは——。
誰かと過ごす幸せなクリスマスにも。
ひとりぼっちのクリスマスなんて関係のない日々を送る人にも。
そっと読んでほしい素敵な贈り物。
冷たい雪は、その時彼にとって、
彼を迎えに来た天使のあたたかい羽だったのかもしれない。
どうかどうか、
世界中のすべての人に。
幸せなクリスマスを。
まず、この作品の中の「光」を感じていただけたらと思います。
イブ、つまり夕方から夜、そして朝。これだけで「光」が大きく変化するのがお分かりいただけるでしょう。
本作者はこの「光」の波の中に主人公の心理を投影させます。すなわち、夕方……日が沈もうとしている頃は、主人公の気持ちも下向きで……といった具合です。
なので、お分かりでしょう。本作ラストで迎える「朝」の、何とまぶしいことか……!
本作はこの光の芸術を見るのと同時に「幸せとは?」についてを考えられます。
あまり多くは語りませんが、本作の主人公には、最後に救いの手が差し伸べられたな、と思います。
幸せの陰にこんな悲劇もあるかもしれません。
でも、クリスマスですから。
悲劇の底にも、温かみがあります。
クリスマスに、一人の男が死ぬという物語。
そこには救いなど、なかったかもしれない。
男の人生は、ほとんど底辺だった。次々と不幸が彼を襲い、たった一人になった男は、浮浪者となった。そんな男が迎えたクリスマス・イヴ。温もりさえない場所で、男は一匹の猫と出会う。
そして、男が最期に出会った者とは――?
男の中で沸き起こる、忘れかけていた想いと、思い出。
そんな想いと思い出の中で、死にゆく一人の男。
翌日発見された男に、果たして救いは見いだされたのか。
上流者階級と社会の底辺の男という対比や、男に対する人々の想いの違い、男の心の変化などが、分かりやすく描かれていて、読みやすかった。
是非、ご一読ください。