一陣の風のようなホラー(シュールな笑いもある)

読みやすくてシュールで面白い文体に惹き込まれてすっすっと読み進めていくうちに、独特の切なさにやられました。

キャラクターが立っていて、森博嗣作品に匹敵するようなやりとりの面白さがあります。
ホラーなんですが、多くの作品とは違い、恐ろしさが絹に包まれているかのように上品ですね。
驚かされるというよりも、不思議さを提示されて鳥肌が立たされました。

夜道を歩いていると、いっそう冷たい一陣の風に撫でられたような心地のする小説です。
その風の冷たさをずっと捉えておきたいけれど、そういうこともいかない。
侘びしいです。
作品を読み終えた時、次回作や番外編や続編を欲してしまうことが多いのですが、この作品においてはこの作品の何というか密度が欲しくなりました。
すっと読めるからこそのあの美しい結末だと思うのですが、結末を知ってしまった今、結末を知らないうちに中盤がもっと長く楽しめれば、風が掴めるものであれば良いのにと身勝手に願ってしまいます。

良作なので、是非書籍化してリブートされたものを心新たに読んでみたいなと強く思います。

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