犬は人間が散歩させるもの。そう思ってはいませんでしたか? この物語では、犬が子供を散歩させている。その犬の視点は、まるで我が子を見守る親のようで、とても優しい。 そしてこの物語には「いぬ」という言葉の様々な意味が引用され、同時に物語が進行していくという面白い仕掛けがある。 この犬は多くを語らずに子供を見守っているが、子供に起こった「悲劇」や犬がこの子供に感じている「義理」など、大きな背景があると分かってくる。犬好きなかたに限らず、このも語りに触れてほしいと思った作品だ。 是非、ご一読ください。
この作品は、言葉を深く「想う」物語だと考えます。言葉は、意味や用法といったようなものだけの存在ではないと、改めて感じました。言葉は感動・思考に深く結びつき、言葉によって描かれるその世界は、考えるものや感じるものではなく、「想う」ものと言えるかもしれません。とはいえ、ストーリーによってもですが、豊かな言葉・表現に、心から感動しました。
優しいテイストの作品です。勘の良い閲覧者はタイトルから題材を予測するでしょう。あの題材については、関係者の数だけドラマが有るはず。それを、真面に喋れない2人の主人公を組み合わせる事で、逆に直裁的な遣り取りを成立させています。まぁ、難しい事は考えずに、作品を楽しんでください。既婚者世代は特に感じ入る事が出来ます。短編にはMAX2つが信条ですが、星3つ付けました。閲覧者へ)蒼山螢氏の「海を見ていた僕達」との読み比べを勧めます。街コン優秀賞です。本作品とアプローチが似ています。
今作、拝読して好きな某二人組のコントを思い出しました。合間合間に挟んだ言葉の解説と、言葉を踏襲した展開、そして物語に漂う切ない雰囲気が思い起こさせたのでしょう。小品であるにも関わらず、犬が人に責任を持つという〈おかしみ〉、失ったことすらまだ気付いていないという〈かなしみ〉が織り込まれていて見事でした。創作物ってかくあるべきだよなあ、と思います。かなしいことをかなしい、というだけでは書く意味がない(と、個人的には考えています)。素敵な作品でした。
犬目線での語りがすごくいいです。あれから五年たって思い返す日々。景色。 "いぬ"という言葉の意味。 深く心に残る作品です。
タイトルに惹かれ、ちりばめられた言葉に引っ張られ、読み続けて……余韻を残して終わる。短いけれど二度読み、三度読みに耐えられる文章。場所は違えど、私はずっと以前訪れた閖上の浜を連想して物寂しい気持ちになります。「いぬひと」のかたりもいいですね。かつて私に唯一友情らしきものをあらわしてくれた彼のことを想起してなりません。人間に比べて遙かに短い命なのに、もしこんな風に考えてくれているとしたら、……切ないですね。このような「他者」の視点から書かれた物語に惹かれる人には、この物語は深く刺さることでしょう。 良作でした。
とにもかくにも本編を呼んでくれと言いたくなる一作。おおくを語るとただのネタバレになってしまうので、一言だけ明言しておくとすれば、私はこの物語に心を〝射ぬ〟かれたのである。
少年と犬の散歩を、兄貴肌の犬の視点で物語は進んでいきます。「いぬ」という言葉を軸にして展開するストーリーは、少年の小さな冒険から、人間や街の成長、そして過去と未来を様々な色彩で紡いでいきます。少年を思う彼の心に、胸があつくなりました。素敵な作品です。
あの日、関東の電車すら止まった日。その時にあの場所にいた人々の、その日からの今まで。そして、失われた数々のものを背負って生きて来た今まで。その日赤ん坊だった子も、ひらがなを読めるくらいにまで成長しました。でも、あの日から帰って来ない人はいて。共に悲しみを分かち合うこと、それを続けていくこと。同じような被害にあう人たちを、出さないこと。風化させてはいけないはずのことを、思い出させてくれました。涙なくしては読めませんでした。心を平らかにして、読む作品だと思います。
最初は、子守をしている犬の優しい眼差しに心が和みましたが、この物語はそれだけではなかった。あの日おこった、すべての出来事を見ることしかできなかった目と、変わってしまった町をながめる眼差し、どれも痛々しく思えましたが、確実に前をむいている。そんな姿にとても心を打たれました。宮城県東松島市のことはあまり知りませんが、本当に海が見え、風を感じる物語でした。ありがとうございます。
もっと見る