雪車町地蔵@カクヨムコン9特別賞受賞

聞き覚えのあったはずの話はどこからか大きく流れを変え、見覚えのない悍ましい恐怖へと連結される。
地の文のユニークさが映える作品。

シナリオ術的な側面で執筆された本作は、映像を想起しやすいような構成となっており、ありありと冬山の情景が浮かぶ。無論、蟹の姿も。 なぜ雪山に蟹が現れるのか？　解らないから怖いのである…続きを読む

謎の存在、ぽっさんとは？
という筋立てではじまるお話。

短編なので、一気読みが推奨されると思います。
尻上がりに話が面白くなり、複線もしっかり回収される完成度高めの作品でした！

いわゆる不思議な話。
しかし読み進めて驚くのは、読者の感情を操ってみせる丁寧な筆運びである。
主人公の気持ちに同調しながら、翡翠を追いかけ、一喜一憂する見事な一作。

恐怖譚を痛快に崩壊させる作品です。
誰もが知っている怪異がどのようにして主人公に追い詰められるか、ぜひ楽しみに読まれてください。

閉所恐怖症の方とかは読めないタイプの恐ろしい話。
そして動物が好きな方はほっこり出来るいい話かと。

読み終えた後になって、そう言った話に聞き覚えがあるとなり、現実との地続き感からゾッとなるお話です。巧みな筆致が紡ぎ上げる語りが、それに拍車をかけており滅法素敵です。

おかしなことにおかしいというツッコミを入れる。ホラーにおける基本であり奥義のようなもの。これを忠実に守り、念入りに繰り返された本作は特有の雰囲気を纏い、読者へ確かな恐怖感を与える。…続きを読む

短い文節の中で語られる物語の梗概は、果たしてAIが認めたものかヒトがAIに近づけたものか。その幻惑感が楽しい一作。

情熱に突き動かされるまま筆を走らせたことが窺える一作。この物語に触れることは、自らの創作の原点に触れることに等しい。この先、さらなる飛躍を遂げることを大いに期待したい。

あるいは邪眼。 もしくは、豆まきの起源をご存じでしょうか？ この物語は希死念慮とはまた異なる理由から死に囚われた主人公が、荒ぶる神……神ではないかもしれないものと対峙し、変化して…続きを読む

この物語は、毎話300文字で構成されています。 ――などという、気が狂ったような内容の本作。 しかも日記形式だというから、驚くしかない。 300文字とは、あまりに僅かな文字数だ。…続きを読む

とても知識豊かに語られる邪教の内容が、なによりもまず読者を襲います。 一見して邪教、その思想を知ってなお邪教。善意に寄りたつ大邪教。 これに挑むのは、被害者達。 巻き込まれただけ…続きを読む

BSS（ぼくのほうがさきにすきだったのに）という用語を説明するのは野暮かも知れないが――というよりも、字面を見たらだいたい解ることかもしれないが、一応話そう。 ぼくの方が先に好…続きを読む

タイトルからしてのろけ全開の本作は、最後まで〝しあわせ〟たっぷりである。 もちろん、殺し屋がいる以上、〝死合わせ〟的な展開も沢山あるし、試練は尋常ではない。 けれど安心して欲しい…続きを読む

今日この日に公開するおじさん構文として百点
なにも知らない読者が読むとすごく荒ぶりそうで好き

大魔王を打ち倒し、異世界を救った超勇者は、無事に元の世界へ戻るはずだった。 しかし、辿り着いたのはなぜか『江戸』！ そればかりか、江戸の町は『鬼』によって襲われており……！？ …続きを読む

WEB小説は、速くて安くてうまいことが重要だといいます。 この物語は、一話1000文字で出来ています。 とてもインスタントに、スキマ時間が楽しくなる読書に向いています。 つまり、…続きを読む

中華後宮ものというと、往々にして女性陣のつばぜり合いというか、なかなかに重たい権謀術数が巡らされているものだ。 しかし、この物語には笑顔が満ちている。 やりとりをよく見れば、もち…続きを読む

ひとは３００文字で暗黒青春小説を書けるか？ ひとは３００文字で死に戻りループ小説をえがけるか？ できる―― 出来るのである！！！ 本作は、自らの命に決着をつけようとする主人公が、…続きを読む

とにかく小気味いい。 どこか道を極めた風情のある瑠々子の口上はもちろんのこと、出てくる怪異と物語の噛み合いが、実に風変わりな味わいを醸し出している。 文芸としての筆の強さはもち…続きを読む

世界中で便器が美少女になった そんな尋常ではない出だしから始まる物語こそ、スケベンキである ツンデレ便器ヒロインが、便器としてのアイデンティティを遺憾なく発揮し、そして主人公が…続きを読む

必要なもの、愛されるもの、望んだこと。 この物語は一見して不可思議で、納得することは難しく、しかし声を上げなければ何も変わらないと伝えるような、願いと祈り、或いはその太極のお話だ。…続きを読む

めでたしめでたし―― 私たちはそんな結びの言葉とともに、何度となくお伽噺を耳にしてきました たとえば幼いころ寝物語に。 たとえば心がくすんだとき、勇気をもらうために。 この小説…続きを読む

ブルーダイヤを巡る物語から始まったこのレポートは、あまりに冒涜的な内容であった。 言葉で言い表すことは難しく、なにかに例えることもまた難しい。 それでも強いて表現するならば、これ…続きを読む

ヒロインが転校してくるところからすべてが始まる物語 ひととあやかしの付き合い方は数あれど、ここまでトントン拍子に上手くいった事例は珍しく、きっと彼らはしあわせになるのだろうと思わせ…続きを読む

全くの偶然だった なんの意図も作為もなく、たまたまTLに流れてきたこの小説に興味を引かれ、読み始めた ……読み終えたのが、8月13日だった たまさかである 運命などではない けれ…続きを読む

なんとなく生きているというのは、人間のすごいところだ 特に目的、理由、ゴール地点がなくても、我々は死なずに生きていくことができる しかし、そこで「けれど」と思う人間もいる 人生の…続きを読む

淡い……！
ふたりの関係性が、とても淡くて素敵です。
ヒロインは愛らしくけなげで、主人公はまっすぐでした。

ニコニコしながら読むことができ、最後にはほろりと泣ける良作です。

吟遊詩人といえば、みなさんは誰を想像するだろうか？ 直近のファンタジーものなら、平成最後の吟遊詩人がアニメ「ゴブリンスレイヤー」に登場している といっても、あちらはむさいオッサン…続きを読む

クトゥルフ眷属邪神群はどこにだって潜んでいる そこにも、ここにも、あそこにも だが、そんなときこそ高らかに唱えよう そうだ、あの宇宙最強の聖句を── 「発狂ぃ……残った！（SAN…続きを読む

十分なリサーチによる解釈と分析が行われており、私ごときが口を挟む余地はない
西行にたいする文献、あるいは論文のひとつとして、ここに長く残しておきたい素晴らしい代物

人類が滅びた世界で咲き誇る、植物少女たちの華の詩 いわゆるポストアポカリプスものなのだが、滅んだ世界に生きているのは植物と人間のハイブリットである 彼女たちは殖えるために花を咲か…続きを読む

始まりの一瞬だけ、強い違和感に視界が眩んだ なんともすわりが悪い、居心地の悪い雰囲気とでも言えばいいだろうか ともかく、その正体を確かめたくて先を読む 手口は巧妙だ 読み進めるほ…続きを読む

日本のどこかで営業する古物店 物々交換なら何でもござれなその店は、しかし、多くの異世界と通じる扉を持っていた！ 店に置かれている代物は、世界を滅ぼすようなものから万能薬、神々が恐…続きを読む

暗黒神話の神性をモチーフに繰り広げられる、ダークヒロイックファンタジーとでも呼ぶべきでしょうか 圧倒的な邪神の力を手にした少年は、身勝手に力を使い続けます その結果、大切な人が傷…続きを読む

この物語には、大河のような趣がある。 読者は観客となって、プレイヤーたる主人公達が、盤面でどう動くのかを楽しむことになる。 しかしその盤面には、とても大きな計略が仕組まれており、…続きを読む

ひとの不幸は蜜の味と言いますが、しかしながら幸せな様を見るのは、もっと甘く蕩けるように素敵なものなのです ということを、説得力十分に教えてくれるのが本作です 平和のための戦い…続きを読む

構文というものがある。 英語の構文と聞けば、覚えのある方も多いだろう。要するに、文章の決められた形のようなものだ。 この形をなぞらえることで、文脈というものが産まれる。 この作品…続きを読む

純文学とは、純粋に芸術としての文学を追い求めたものである この小説の主題は性欲であり、それが芸術的な巧緻をつくして描かれていれば高い評価を得られると仮定する 悪友同士の他愛のない…続きを読む

ある日主人公が家に帰ると、ずぶ濡れの親類の女の子がいて── という導入で始まる疑似家族的なお話です。 大人である主人公は、自分を頼ってきた少女以上に深い悩みを抱えていて、読者は…続きを読む

企画の趣旨を存分に理解された上で書き上げられる、珠玉の掌編。
存分に語りかけてくる暗黒宇宙の神性を体験できるものと信ずる。

自分のかきたい暗黒神話を！　というお題に対して、新種の神話生物をぶつけてくる気概には感服の念を抱くしかない。 周到に綿密に、多くの経験を経て書き上げられたセンテンスは、強い情熱と確…続きを読む

宇宙の創生からソゴスの誕生、そして地球の覇権をめぐる争いを独自の視点で描いた対話の物語。 独自的解釈もよい味を出しており、興味深い。 終始柔らかな調子で進むので、クトゥルー神話の固…続きを読む

観測者理論というものがある。 日本人が大好きな、観測されることで初めてモノは存在し、見るものによって性質を変える、という理論だ。 簡単な哲学、思考実験の一種だが。 では、この観測…続きを読む

古式ゆかしく呪術とは、すなわち呪い、祓い、身を雪ぎ、穢すという行為によって成り立つものだ。 わかりやすく言えば、藁人形と釘がなければ丑の刻参りはできないということである。 呪術に…続きを読む