概要
かつて地球は、平和で豊かな世界だった。
ユートピアの愚かな影王が、空を落としたあの日までは――
空が落ちた日、ひとつながり大地パンゲアがばらばらに解けて散った。
ユートピアの少女ナージェは、空が落ちた日、体と心の時を止めてしまった。
黒い棺と罪を背負った永遠の少女ナージェは、醜い異形のイェンとともに、影王を探している。
水底の街アトランティス。
子どもの街ネバーランド。
階層都市エルドラド。
無数に解けて散った街を巡る、はてなき旅。
すべては、影王を殺し空を取り戻すために。行き着く先に、何が待っているのか、永遠の少女はまだ何も知らない。
規格外の異世界ファンタジーが、ここにある。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!空を求めて旅をするダークファンタジー
空が落ちてしまい、大地がバラバラになってしまった世界。空を取り戻すべく様々な都市を旅をする少女ナージェの壮大な冒険物語。
ナージェは黒い棺を背負っていて、そこには異形の怪物イェンが収まっている。
物語はイェン視点で描かれていくのですが、それがまた面白いです。
イェンは基本的には自ら動くことができないので、ナージェの後ろから状況を把握するような形になります。
その視点こそ読者視点のよう感じられるのですが、イェンの考える歪んだ思いに不気味さとダークさを覚えます。その視点と思いの絶妙なバランスが、この作品の魅力のひとつだと思います。
そして、終盤で明かされる世界の仕組み。
空を落とした張本人…続きを読む - ★★★ Excellent!!!巧みな構成と絶妙なクロスオーバーで綴られる、壮大なダークファンタジー!
空が落ち、崩壊に向かう世界。棺を背負う少女ナージェと棺に眠る異形のイェンが、世界を元に戻すために旅を奇妙な街を旅して回る、SF風味もある壮大な作品です。
イェンの視点で綴られますが、時に暴走気味になる彼のナージェへの愛情表現は、
ダークトーンな物語の清涼剤となっています。
それぞれの街に住む人々の暮らし、彼らの過去を知る中で、崩壊に向かう世界やナージェそのものの秘密も少しずつ明らかにされていくストーリーに、ついつい次話へ次話へと手が動いてしまいます。とても巧みな構成。
作者様の既存作とのクロスオーバーもお見事。知っている人は「うおおお! ここでそれが出てくるのか!」となり、とはいえ知ら…続きを読む - ★★★ Excellent!!!筆者様のファンタジーの(現時点での)集大成的作品
破壊されてしまった世界で、世界を元に戻すために旅をする少女と異形のお話です。
世界と世界を渡る渡り鳥の存在、それぞれの居場所で精いっぱいに暮らす人々、そして彼らの生き方を尊重しつつもその考えに寄り添いきれない主人公のナージェ。
彼女と異形のイェン、彼らの旅の途中から、結末までの物語。
それぞれの過去も密接に絡み合い、実に規格外かつ重厚な世界観となっています。
筆者様の作品を知る者が読めば、過去作の要素にそれぞれニヤリと出来る演出も心憎いです。
とはいえ、読まなければ分からないという程ではなく、むしろ他の作品を読みたくさせるようなバランスで描かれています。
これを機に、皆様も魅力たっぷりの…続きを読む - ★★★ Excellent!!!歪な世界と歪な愛憎 棺に封じられた異形が永遠の少女に齎すは救いか絶望か
世界に空を取り戻すため、ばらばらになった『街』を旅して巡る、歳を取らない永遠の少女ナージェ。
彼女が背負う棺に封じられた異形の怪物イェンが、物語の語り部です。
この作品を読み始めて真っ先に惹かれるのが、その世界観でしょう。
夢の中のような理想郷の形を取りながら、その実どこかに闇を孕んだ『街』。
蠱惑的で、歪で、それゆえ不気味。
見せかけの平和の裏側で、本当は何が起こっているのか。
禁じられた扉の隙間からそっと向こうを覗くような甘美な感覚が、たまらなく癖になります。
そして、イェンがとにかく魅力的です。
ナージェに対して粘性の拗れた愛を捧げる一方で、彼が真に求めているのは彼女の『絶望』。
…続きを読む - ★★★ Excellent!!!無邪気な残酷さで優しく痛く紡がれるダークファンタジー
空が落ち、砕けた大地を舞台に時を止めた少女・ナージェと黒き棺に囚われた異形・イェンが旅をする壮大なダークファンタジー。
イェン視点で語られる柔らかで歪んだ世界は重く澱んだ空気に満ちてはいますが、気付けば飲み込まれ、薄闇に目を凝らし手探りで進む二人と一体となって先へ先へと読み進めてしまいました。
謎が解けたかと思えば、また謎が。
一つの旅の終わりは、また次の旅の始まりに。
この連鎖の行き着く先には何が待ち受けているのか?
元来の空の如き収束か、はたまた現在の大地の如き四散か、それとも?
謎多き世界に取り込まれて逃れられなくなる作品です。
イェンくんの活躍、楽しみにしてます!! - ★★★ Excellent!!!どこまでも懐かしく、どこまでも新しい世界。
本作は、テンプレートに沿った作品が好まれる傾向の強いWEB小説界隈において、常にテンプレートを破壊し続ける笛吹氏の最新作である。
良質な海外ファンタジー小説を彷彿とさせる世界観を彩るのは、やはりテンプレートから逸脱した魅力的なキャラクターたちだ。
棺を担いだ永遠の少女ナージェと、棺の中に収められた醜い異形のイェン。
自らの意思で動くことの出来ないこのイェンを語り手とすることにより、笛吹氏のテンプレート破壊は一層加速している。
時に彼は、永遠の少女ナージェへの歪んだ欲望を吐露する。
率直で純粋な彼の愛情は、実に変態的で直截的だ。
艶めかしい闇を抱えた棺の中の彼は、世界の謎を簡単に紐解…続きを読む