歪な世界と歪な愛憎 棺に封じられた異形が永遠の少女に齎すは救いか絶望か

世界に空を取り戻すため、ばらばらになった『街』を旅して巡る、歳を取らない永遠の少女ナージェ。
彼女が背負う棺に封じられた異形の怪物イェンが、物語の語り部です。

この作品を読み始めて真っ先に惹かれるのが、その世界観でしょう。
夢の中のような理想郷の形を取りながら、その実どこかに闇を孕んだ『街』。
蠱惑的で、歪で、それゆえ不気味。
見せかけの平和の裏側で、本当は何が起こっているのか。
禁じられた扉の隙間からそっと向こうを覗くような甘美な感覚が、たまらなく癖になります。

そして、イェンがとにかく魅力的です。
ナージェに対して粘性の拗れた愛を捧げる一方で、彼が真に求めているのは彼女の『絶望』。
このように歪んだ愛憎を抱きながらも、基本的には冷静かつ常識的で、無茶しがちなナージェを窘めたりサポートしたりします。

ナージェの力なしでは棺の外にも出られないイェンですが、ナージェの知らない重大な事実を握り込んでいるようです。
まるで、互いを縛り合っているかのような関係。
そこに隠された秘密が紐解かれる時、きっと世界の真実が明らかになる。

物語がこの先どこへ向かっていくのか、とても楽しみです。

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