圧巻の一言につきるこの壮大な物語は、ファンタジーというより、叙事詩と呼ぶ方が相応しいと思います。
奥行きのある世界観。体温や息遣いまで感じられる登場人物たち。絶対的上位者の前では人の小さな努力など無駄だと思わされる絶望も、それでも大切なものを守る為に足掻く必死さも、一方で、同じように魔竜の脅威にさらされながら、いつまで経っても手を携えるのではなく奪い合うことしかしない人のどうしようもなさも、全てがとにかく細密で、展開される物語に圧倒的な現実感を与えています。故に、登場人物たちを見舞う運命は時に非情ですが、ご都合主義的な奇跡が恵まれることがないからこそ、彼ら彼女らの生き方は、闇を照らす光と感じられます。
英雄の物語ではなく、英雄「たち」の物語。善が悪を裁くのではなく、叡智が愚昧を圧倒するのでもなく、素晴らしいところもどうしようもないところも全てひっくるめて、これが人というものだと語る――そんな物語がお好きな方は、是非。
(追記)
完結されましたので、祝辞代わりに追記します。構成の妙といい、人物造形といい、最後の結論に至るまで、本当に素晴らしかったです。一過性のテンプレには無い、普遍性を内包する骨太の物語。ぜひ、多くの方々にご賞味頂きたいと思います。
剣と魔法の世界を舞台とした、本格ダークファンタジーですね。
人とドラゴンの戦いを軸に、各登場人物へ焦点を当てながら物語を紡ぎあげてゆく群像劇です。戦記またはサーガと言った方が妥当かもしれません。
この作品の魅力ですが、とにかく描写力が素晴らしいです。
人物描写・情景描写・そして戦闘描写。どれもが秀逸で、実際に映像で見ているかの如き臨場感を味わえます。
特にドラゴンとの戦いのシーンは圧巻。人類が強大な敵を相手に策を巡らせ、力を合わせ、多大なる犠牲を払いながら抗う姿は熱く、とても胸を打たれます。
作中には各登場人物の視点が登場し、それぞれの心境や過去を深く知ることで、どのキャラクタに対しても愛着が持てます。その中には、前述のドラゴンの視点までも含まれているほど。
それに対比するように最重要人物である「エシュー」に関しては謎が多く、物語への興味が尽きません。彼の登場するシーンは、いつも食い入るように読んでしまいますね。
読みごたえのある作品ですが、エピソードごとに話が綺麗にまとまっているため取っ付きやすいです。ダークファンタジーですが過激な描写は登場しませんので、安心してページを捲ることができます。
全体的に文章が読みやすく、完成度が非常に高いですね。
とにかく語り始めるとキリがないほどの、とてもオススメできる作品です。
間違いなく名作ですので、皆様も是非どうぞ。
一つのエピソードを読み終わる毎に、壮大なファンタジー映画を観終わった時の、ここではない何処かの世界にどっぷりと浸っていた感覚になります。
赤の魔竜の圧倒的存在感!
登場していない回にも、魔竜の存在がこの世界に濃く影を落としていることが分かります。
天災とも言える無慈悲な凶行は、昔ながらのファンタジーとドラゴンを愛する方には刺さる要素ではないでしょうか。
そして、厚く創造された世界に登場する人物達の眩いこと!
各国に、それぞれ異なる目的や思想を持った人々(亜人も含め)が登場しますが、その誰もが人間臭く、作り物ではない感情を溢れさせるのです。
熱く、泥臭く、時には清々しく。
読み進めれば読み進める程、確かに彼等はこの物語の中に生きているのだと感じます。
硬派なファンタジーをお好みの方々に、そして胸熱くする人間ドラマを味わいたい方にも!
是非とも読んで頂きたい物語です。
圧倒的な力を持つ天災というべき赤の魔竜レギアーリ。
物語は隊商の一団が魔竜に襲われるシーンから始まります。
魔竜の悪戯のせいで親を殺された子供のエシューが長い年月をかけて己の力を磨き、魔竜レギアーリと対峙していくのですが、その間に様々な人々と巡り合います。
エシューが子供から少年、そして青年へと物語の経過に合わして、多くの経験をし強くなっていくのも見ごたえがあります。
いくつのも国々や人々が幾重にも関わりながら物語は進んでいく。
まさに群像劇という言葉がピッタリな読み応えのある物語です!
良質な戦記ものが好きな方はぜひ読んでみてください!