概要
サヤに振り回されつつ保護したツカサは、成り行きで彼女を預かることになった。
二十年以上も前の過去に、自分の一部を置き去りにしたままの冴えない独身男ツカサ。
問題を表面化させてしまった小学五年生の家出少女サヤ。
気ままな人生を謳歌していた奔放な女ミコト。
この夏が過ぎれば、何かが変わっているかもしれない。――三人は、そんな予感を抱いていた。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!「夏」と「雨」に彩られた読後感爽やかな物語
ある夏、ギリギリアラサーの主人公が親戚の女の子を預かることになり、「家族ごっこ」が始まります。
単純に主人公と女の子の成長物語かと思いきやとんでもない!
未だに未練のある元カノ、過去のトラウマとフラッシュバック……と物語がどんどん展開していき、巧みな構成でついついページを捲ってしまいます。
夏の象徴として、色んなシーンで雨が出てきますが、この使い方も素晴らしいです。雨が降ること、あがること、道端の水たまりでさえ、物語のポイントとして配置されています。ぜひ注目してみてください。
楽しいだけではなく苦味もあるけど、読み終えたあとは心地よい満足感でいっぱい。オススメです! - ★★★ Excellent!!!過ぎると言うことは……
タイトルを見てふと思ったのです。なぜ「過ぎる」のかと。
この作品はある夏に起こった出来事を語っています。
独身男性の叔父のもとに小学生の姪が転がり込んできて、叔父の幼馴染みと三人で過ごす物語です。
もちろん夏にその出来事は起こっています。
この「過ぎる」という意味は作中で明かされますが、なるほど終わってみるとその意味がよくわかります。まさにぴったりといえるでしょう。
タイトルからエンディングまでしっかりと構成されていて、言葉の意味がよくわかりました。
間違いなく良作です。
この三人に幸せが訪れますように、そして願わくばずっと続きますように。
そんな気持ちに思わせてくれるひと夏で…続きを読む - ★★★ Excellent!!!その夏は彼らのこれまでを整理してくれた
ひょんなことから遠縁のサヤを預かることになった主人公のツカサ。
困惑しながらもサヤの家の問題が片付くまで、昔の恋人ミコトと一緒に生活することとなる。
サヤとの生活の中で、ツカサは抱えているトラウマと向き合う。
これまでの人生で壁にぶつかるたびに、そのトラウマのせいで前向きになれないのだと考えていた。
しかし、それだけではなかった。
ミコトと別れる原因を生み出したのはそのトラウマだったかもしれない。
けれど、ミコトと別れたあとはそうではない。
そのことに気付き、克服すべきもう一つのトラウマとも向き合おうと決意する。
同時に、サヤもミコトも自分が抱えている問題に気付き、…続きを読む - ★★★ Excellent!!!誰もが傷を持って生まれてくる。
ひとは生まれてくるときにへその緒を切り落とされる。
これが人生で最初につく傷だ。
本来、全能であった存在から、ひととしての経験を重ねるごとにその神性は失われて我々はただの人間となる。
よく子供は7歳までは神のうちだと言われる。
善も悪もない、荒ぶる神だ。
親は時としてその荒ぶる神に、ひどく絶望してしまう。
我が子なのに心が通じないと。
だが忘れないで欲しい。神は幸せをもたらす奇魂でもあることを。
この物語もまた、傷をもった人たちが登場する。
お互いの二面性を持ち寄り、支え合い、共に歩もうと決意する。
他人の心へはどれだけ踏み込むことが許されるのか。
同情は果たして正しいのだろう…続きを読む