赤飯
花月
『ミコトさん、頑張ってくださいね(๑•̀ㅂ•́)و✧
応援してます!!
追伸
もうしばらく、ヒトミを紹介するのは待ってくださいm(_ _)m』
ミキ
『わたし、今日仕事ですけど、ユイは家にいますから、何があったら逃げてきてくださいね。
応援してますけど、やっぱりミコトさんが傷つくのはもう嫌です(´・ω・`)
甘いものが必要だったら、冷蔵庫のプリン食べてください。なんなら、ユイを召し上がっていただいてもいいですよ’(ノ´∀`*)』
ユイ
『ちょっとミキ、何言ってるの?! 召し上がっていただくのも、やぶさかじゃないけど……
ミコトさんが玉砕する前提で話をしない!! 失礼でしょ(# ゚Д゚)
ちゃんと応援してますからね。
ミコトさん、ミキにはちゃんと言っておきますから、しっかりケリをつけてくださいね。あんなヘタレなんかよりも、いい人はたくさんいますから!』
ミキ
『ユイも失礼なこと言ってるぅヽ(`Д´)ノプンプン』
中華のリョウ
『上手くいってもいかなくても、店に来いよ。
餃子でも、唐揚げでも、チャーハンでも、うまいもん腹いっぱい食わせてやるからな』
サクラ
『いいわね。ミコトが、ちゃんと今日ケリをつけなかったら、わたしたちみんなでインポ野郎をボコりに行くからね(●`ε´●)』
こんなの、笑うしかないだろ。
「シシッ。まったく、あいつらときたら……」
昨日は、あのあと、リョウさんの店でチャーハンを食べてから、二人でケンジを迎えに行った。相手が自転車だったからとはいえ、本当にたいしたことがなくてよかった。足首の捻挫と、打撲。頭をブロック塀に強く打っていたことが心配だったけど、本当にたいしたことなくてよかった。
サクラはケンジの退院をお祝いしようと、あたしに自分の家に泊まるように言ってきた。心配してくれているのがわかっているし、素直に嬉しい。それに、ケンジの退院を祝いたい気持ちもある。
だけど、断った。
サクラとケンジ、夫婦水入らずでゆっくりしてほしかった。なにより、あたしは自分自身のことをちゃんと考えたかった。そう、ツカサとの関係のことだ。
あたしを一人きりにするのを渋るサクラに、一時間おきに生存メッセージを送るからと、強引に納得させた。彼女も、あたしの心配よりも旦那と二人で過ごしたいという迷いがあったんだろう。くどいくらい何度も約束を確認させて、あたしを家まで送ってくれた。
そして、朝起きたら、あいつからからのあのメッセージだ。
今、あたしはツカサがいるアパートの前に来ている。
あの三週間で、あいつが休みの日は特に出かけるでもなく家で過ごすということを知っている。特に、昼前の一番暑い時間帯は。
応援メッセージにもう一度勇気をもらって、あいつの部屋のインターホンを押そうと指を持ち上げたときだった。ガチャリとドアノブが回った。びっくりして呼吸を止めてしまったあたしの目の前で、グレイのドアが開く。
ドアを開けたのは、ツカサじゃなかった。
「サヤ、ちゃん?」
あたしに驚いて足を止めたのは、サヤちゃんだった。家でのきっかけになった黒いオフショルダーワンピースを着ていた。
「ミコト?」
青ざめていたサヤちゃんは、安堵の息をついて、あたしの腕を掴んでだ。
「ミコトが来てくれてよかったぁ。わたし、わたし、どうしたらいいのか、わからなくて……」
「サヤちゃん、どうしたの? 落ちついて」
すぐに気がつくべきだった。あたしの腕を掴んだ手は震えているし、真っ青な顔をして今にも泣き出しそうじゃないか。
「おじさんが、急に……わたし、わけわかんなくて……」
「……っ」
ツカサに何かあったんだ。
パニックをこらえるサヤちゃんの手を振りほどいて、靴を脱ぎ捨てる。
「ツカサ? おい、ツカサ」
ツカサは、流し台の下で横になっていた。なんでこんなところでと思ったけど、上半身を抱き起こしてみても、眠っているだけのようだった。冷静だったら絶対にしなかっただろうけど、乱暴に揺さぶってもツカサは起きない。顔色はよくないけど、呼吸は安定していて、ぐっすり眠っている。
「おじさんが、急に苦しそうに息して……それで……」
「サヤちゃん、何があったのか、落ち着いて聞かせてくれる?」
今にも泣き出しそうなサヤちゃんは、コクリを頷く。でも、落ち着くのは難しいようだった。
「ごめん。とりあえず、何があったのか話して。整理できなくてもいいから、話しながら落ち着けるかもしれないから、とにかく話して」
「うん。あのね……わたし、生理がきたの」
生理。たぶん、初潮だろう。
サヤちゃんは、なんとか順番に説明しよう頑張ってくれた。つっかえつっかえの話を聞いていくうちに、ツカサのトラウマに触れてしまったのだと知った。そうとわかれば、ツカサは大丈夫だろう。少なくとも、このまま死んでしまうようなことはない。ほっと胸をなでおろして、サヤちゃんに持ってきてもらったビーズクッションの上に彼の上体を預ける。
今は眠っているツカサよりも、こらえきれずに泣き出してしまったサヤちゃんのほうが心配だ。
サヤちゃんに出しただろう飲みかけの麦茶のコップと、ピッチャーが座卓の上にあった。
まだ冷えている麦茶を注ぎ足して、サヤちゃんの前に置く。まだ飲むとかそういう余裕はないだろうけど、飲みたくなったらすぐに飲めるようにしておきたい。
「そっか。今度はママとおばあちゃんが喧嘩しちゃったんだね」
「うん」
「それで、またツカサに相談しに来たんだね」
「うん」
「サヤちゃん。生理のことは、とってもデリケートな話だから、あたしとか、ユイやミキに相談するとよかったね」
「ごめんなさい」
家に帰った翌日、サヤちゃんに初めての生理がきた。環境の変化がという話を耳にしたこともあるけど、今はどうでもいい。
タイミングが悪いことに、サヤちゃんのおばあちゃんが来てしまった。サヤちゃんが、自分よりもママが好きなのはと悩んでいたおばあちゃんだ。もしかしたら、サヤちゃんに謝罪の気持ちもあったのかもしれない。それとも、悪い考え方をすれば、自分の娘であるサヤちゃんのママに何か物申しに来たのかもしれない。それも、今はどうでもいい。
とにかく、サヤちゃんの初潮を祝わなくてはと、おばちゃんは喜んだ。赤飯を用意しようとしたおばあちゃんに、ママは反対した。自分は嫌だったというのが、反対した理由だ。あたしの頃には、廃れかけていた風習だ。あたしは、お祝いも何もなかったからわからないけど、恥ずかしさは想像できる。
「パパは、なんて言ったの? パパも知っているんだよね」
「パパは、わたしが決めればいいって言ってくれた」
サヤちゃんは不満そうに口を尖らせた。だが、今まで女の子だからと踏みこまなかったパパには、いきなりそれはキツい問題だろう。
「なるほどねぇ。今度はママとおばあちゃんが喧嘩かぁ」
「うん」
「どうしたものかなぁ」
「うん。わたしが決めればいいって、ママも言ってくれたけど……嫌なのはわかるし、おばあちゃんは……」
サヤちゃんは優しいから、自分の気持ちよりも家族のことを優先したいんだろう。
なかなかいいアドバイスが見つけられないでいるうちに、サヤちゃんは落ち着きを取り戻した。
「ねぇ、ミコト。チカちゃんって、誰?」
サヤちゃんが、取り乱してツカサが口走っただろう名前のことを知りたがるのは、当然のことだった。
ツカサはまだ眠っている。
ちょうどいい機会だ。あたしも、あの頃のことを、もう一度整理しておこう。
「和田
思えば、あたしが誰かにチカコのことを話すのは、これが初めてだ。
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